日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

冬の海を見ること

【定義】
神の声は、民衆の形をとる
神の声は、今を生きる人たちの声の中にある
神の声は、弱き者たちの声の中にある
神の声は、島の習わしを後世に継ごうとする人たちの中にある
神の声は、生き物たちの中に
海にそそぐ光の中に
風に揺れる葉擦れの音の中に
明け方の夢に
幼い日の記憶の中に

【散文】
生きる物語は、
神様が教えてくれる。
神様の声は、
風景として、時に誰かの言葉として、
心に伝わる。

時が過ぎてから気づくこともある。
音楽のように響いてくることもある。

声は沈黙の中にある。

小さな命の失われゆく、
あの冬の夜。
ヤギ小屋に座りこんで、
どうしてこんなに星々が美しいのかと思った
あの沈黙の中に。

「生きよ」と言った。
罪や後悔を
確かに自分のものとして、
刻んで、生きねばならない。

あなたの悲しみを
聞かなければならない。
直視しなければならない。
あなたの生きていく道を
見つめなければならない

そして時に
ともに傷つき、
ともに励まされ、
前へと進まなければならない。

時の矢は、前にしか進まないから。

歩き続けるのは、
進む時の中に生きる
私たちのさだめだから。

いったい誰のために、
何のために、
進まなければならないのか?

神様は答えてはくれないけれど、
分かってもいる。

私たちは祈りの言葉のために、
人生に傷つき、
悲しみ、
希望を手にする。

祈りの言葉は、
目の前の誰かを
今日、明日で救いはしなけれど。

真摯に祈りを尽くすことが
世界に物語を宿し、
物語の中には約束があり、
私たちの命を繋いでいく。

世界が生まれて、
私が生まれて、
光と闇は分かれ、
あなたと私も個々別々の存在となり、

虫も、花も、風も、木々も
空も、雲も、海も
すべての事象が、
個々別々の要素の
はたらきと繋がりで、
ひとは愛し、
ひとは憎み、
時に奪い合い、
時に身を尽くして、
相互作用の中で
生きている。

約束とは、
個々別の命が
もとはひとつであったこと、

この世界で
ばらばらに生きて、

互いに人生の中で出会う誰かと、
ひととき
関わりを紡ぎ、

音楽の中に、
光の中に、
風の中に、
私たちは命が
たったひとつであったことを知る。

約束とは、
いつかまた
あなたも私も、
ひとつの命に還っていくということ。

そのために私たちは
この地上で生を受け、
そしてあなたのさいわいのために
心を尽くす。

私たちは、
現実のさまざまなことに
引き裂かれながら、
愛ゆえに憎しみ、
平安をのぞむゆえに他者をしいたげ、
時に自分自身を傷つけながら、
ばらばらの個として、
孤独の生をいきる。

何ができるのか?
と、自分自身に問う。

ただ、まず感じること。

誰かの悲しみを、
誰かの喜びを、
誰かの希望を、
その存在を。

神よ、
いつかあなたの中へと還る
そのとき、

愛しいいくつもの魂が
ともにひとつに繋がって、

もう今度は悲しみに引き裂かれないよう、
過ちに引き裂かれないよう、
現実に引き裂かれないよう、

あなたと繋がって、
あなたと繋がる
別の誰かと繋がっていく。

その約束を
たしかに果たすために、
この世界を生きる私たちは、

互いが愛し合うよう、
互いが慈しみ合うよう、
この世界に相互の調和が成り立つよう、
今を生きていくのだ。

約束の履行。

額田王が国のために
うたを詠ったように、

私たちも言葉を紡ごう。
民衆のための言葉を。

神の声を聞き、
沈黙の声を聞き、
名もない詩人の詩を聴こう。

それは祈りの言葉になり、
この世界を調和に導く。

小さな祈りの歌は、
無数の人々の声によって
この世界に響き、
明日に迷う
誰かに届く。

神は語りかけている。
いつでも
私たちの心が
ひらかれていれば
聴こえる声を。

私のゆく先を
導く声を。