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日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

映画の感想 - 内なる時間と物理の時間

movie

映画の感想を書くと、あとで恥ずかしくなって消してしまう癖があるので、宇宙について思ったことだけちょっと。

インターステラー」というSF映画を見てきました。
どこかで「ウラシマ効果」などと書かれていたので、ネタバレじゃないか!と憤ったのですが、ネタバレってほどネタバレじゃなかった。

前に六本木ヒルズプラネタリウムをやってて、ヒルズだけにセレブなプラネタリウムにちがいないと思って出かけたことがありました。宇宙船に乗って他の銀河まで旅するというコンセプトで、知的刺激は受けれるものの、視覚的には否めない残念感。

けれど最後のコーナーで、「光速で移動したため、宇宙船の時間は地球の時間よりゆっくりと進み、戻ってきたときには数億年経っていました。以前の地球は滅んで、目の前にあるのは二個目の地球です、おかえりなさい!」という展開になってて、妙な満足感とともにヒルズを後にしたのでした。

もしかしてインターステラーもそんな内容なの・・・と思ったけど、大丈夫だった。
でも、ウラシマ効果は物語の全体に始終関わってくる、重要なテーマでもある。

* * *

厳密に言うと違うとか言われそうだけど、素人理解をおそれずに書くと、なぜ林檎は落ちるのか?を説明するのに、ニュートンアインシュタインでは異なる。

ニュートンは引力に引っ張られて、林檎が落ちたと考えた。質量の大きな物質には、より大きな引力が働く。林檎と地球では、地球の方が質量が大きいから、林檎は地球に引っ張られる。

アインシュタインは、質量は空間を歪めると考えた。質量の大きな物質は、周囲の空間を大きく歪め、離れた物質を自分の方へと引き寄せる。空間が歪むから時間の進み方も遅くなる。だから大質量ブラックホールの近くでは、時間はゆっくりと進む。


なかなか圧巻の、空間の歪みとブラックホール、タイムトラベルについての図入り記事。

作中で物理学者がワームホールを説明するのに、端に記した2点が接するようにメモ紙を折り曲げるシーンがあるけれど、ワームホールも時空を歪めるという考え方にもとづいている。

映画の主人公たちは、宇宙空間を移動するうちに、地球の時間とどんどん乖離していく。
物語の中ではそういう時間の怖さみたいなのをずっと描いている。

* * *

ノーラン監督のインセプションも、よく似た構造の話だと思う。
夢の中、さらにその夢の中・・・と無意識の階層を降りていくと、時間の進み方はどんどん遅くなる。

インセプションのこぼれ話で面白かったのが、夢から戻る合図として使われる楽曲、エディット・ピアフ「水に流して」をスロー逆再生した曲が、下階層の挿入歌に使われているという話。
つまり、無意識の階層を深く降りていくと時間がスローになる、ということを表しているわけです。

ということを下敷きにしてインターステラーを考えると、そこにもやはり、時間に対する畏れが横たわっていると感じられる。
インセプションが内なる世界の時間なら、インターステラーは宇宙という物質世界の時間への畏れ。

* * *

余談になるけれど、人が世界を知る手がかりとは「時間」と「空間」だと、個人的に思う。

そう思うようになったのは「共同幻想論」という民俗学の本を読んだことがきっかけで、読破した当時、「時間」と「空間」の認識を得たとき人は「世界」を手に入れるのだ!などと思った記憶がある。

単に外部刺激としての五感とは違って、時間と空間の把握は複雑な認知になる。
知覚のわずかな差異から相対的に、私たちは空間と時間を把握している。「時間」と「空間」の認識は、行動しながら手探りで獲得する、極めて主観的なものだ。
だから主観の「時間」をテーマにしたノーラン監督の作品は、どこか哲学的で人を惹きつける。

* * *

ついでに思い出したのだけど、私はプラネタリウムが好きで、たまにふらっと都内にプラネタリウムを見に行ったりする。
最後に見たのが、アルマ望遠鏡をテーマにしたもので、プラネタリウムの天蓋に延々と映し出される望遠鏡の説明を眺めて、これまたシュールな気持ちになった。私は宇宙を見に来たはずだった。

でもこれがすごく面白かった。
アルマ望遠鏡は、目には見えないミリ波・サブミリ波をとらえることができる。宇宙の歴史は137億年と言われているけれど、アルマ望遠鏡で120億光年先の宇宙を見たとすると、そこに映る光景は、120億年前、太初の宇宙の姿なのだ*1

私たちも、私たちの祖先も、地球も、銀河系も生まれる前の世界を覗き見る。文明も、アルマ望遠鏡も存在しない過去の光を。そう想像すると、主観と客観の時間の倒錯に、ふいに陥る。


映画の感想ではこちらの記事がとてもよかったです。宗教や親子や怒りの葡萄やら。
ってか、スピルバーグインターステラーは、ヒルズのプラネタリウムと同じやってんな。


インターステラー:壁紙

*1:ちなみにアルマ望遠鏡電波望遠鏡なので、筒を覗き込んで120億光年前を見ることができるわけではない。複数のパラボラアンテナで受信した電磁波(肉眼では見えない)を、画像に変換することで、私たちの目でも宇宙の姿をとらえることがでる。