Bunkamura ザ・ミュージアムで開催のピーター・ラビット展へ行ってきました。
やや混雑ぎみと聞いてたので、いつもは怯んでしまうところですが、ピーター・ラビットむかし模写したりして思い入れがあったので、ちょっと見ておきたいかな、と午前のうちに渋谷まで足をのばしたのでした。
小さい絵ばかりなので、列が滞りがちなのは仕方ないかな。こういう時は音声ガイドに頼ろう。列の流れを待つ間、ビアトリクスさんにまつわるエピソードを聴きながら、じっくり見て回る。
冒頭に展示のビアトリクス・ポター18歳の頃の日記は、なんと暗号で書かれています。今は解読されているこの日記、「勉強は退屈だから、絵を描いていたいわ」と内容は他愛ないものですが、それにしても暗号…自分の世界をはっきり持った人だったのだなあと思いました。
飼っていたウサギのスケッチをするのが好きだったビアトリクス。絵本を描くきっかけは、知人の病気がちな子どもを励ますために描いた絵葉書でした。のちに彼女が写しとったその絵葉書が展示されていましたが、さらっとしたペン画に、積み重ねた確かなデッサン力がうかがえます。
伊藤若冲が鶏に思い入れがありすぎて、鶏を飼って毎日写生していたとか、森狙仙は猿を飼うだけでは飽きたらず、山にのぼって野生の猿を写生したという話がありますが、そういった生き物への関心と愛情が、ビアトリクスにも感じられるのです。
なにより魅力的なところは、その世界観です。木の根本の穴ぐらに住んでいるウサギの家族。いたずら好きのピーターは、マクレガーさんの畑に入って追いかけられてしまう。命からがら逃げ帰ったその夜、おなかをこわしたピーターに、お母さんがカモミールティを作ってくれます。
こういう世界があったら素敵だな、という世界が、彼女の中でどこまでも広がっていく。子ども心に純粋にワクワクするものが、いくつになっても色あせない。ピーター・ラビットの世界に、生きものとのふれあいや、森の中の別世界など、子どもの頃の憧れを思いおこすのでした。
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ピーター・ラビットの世界は、イギリスの”美しき郊外”の雰囲気を濃密に漂わせています。ビアトリクスが生きた19世紀末のイギリスは、産業革命で工業化が進み、都市の環境破壊が問題になった時代でした。その反動で"田舎への憧れ"がつくり上げられた時代でもあります。
ビアトリクスにインスピレーションをもたらせたのは、イングランド北西部の湖水地方でした。手にした印税で土地を購入して、農園経営者になるほど。一時は絵本から離れるほど農作業に入れ込み、この土地を愛しました。
遺言により彼女の土地は、英国の歴史・自然保護の活動をおこなうボランティア団体、ナショナル・トラストへ寄贈されます。湖水地方の自然と景観、その暮らしを生涯をかけて守ったビアトリクス・ポターは、環境保護活動の先駆者でもあったのでした。
女性が社会につながる意識の薄かった時代。家庭教師に勉強を教わり、普段外に出ることもなく、弟とウサギだけが友だちだったといいます。46歳のとき両親に婚約者を紹介するも、家柄の違いから猛反対を受けてしまう。結局、弟の支援を受けて結婚するのですが。そんな時代に絵本作家*1、農場経営者として我が道を歩んだ彼女の、芯の強さを思わずにいられません。
これを機に絵本でも買おうかなと思ってたものの、一期一会という気がして、つい図録を購入。お母さんがピーターにつくったカモミールティや、ベンジャミンのお父さんが吸ってるウサギタバコことラベンダーの茶葉も、可愛らしい小瓶に入って売ってました。商売上手ですなあ。
Bunkamura ザ・ミュージアム
期間 2016/8/9(火)-10/11(火) ※会期中無休
時間 10:00-19:00/毎週金・土曜日は21:00まで(入館は閉館30分前まで)
福岡 福岡県立美術館 2016年10月28日(金)~12月11日(日)
仙台 TFU ギャラリー Mini Mori 2016年12月20日(火)~2017年2月1日(水)
大阪 グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボ 2017年2月11日(土)~4月2日(日)
広島 ひろしま美術館 2017年4月15日(土)~6月4日(日)
ビアトリクス・ポター™生誕150周年 ピーターラビット™展|ザ・ミュージアム | Bunkamura