日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

動物絵画の250年 @ 府中市美術館

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日本人にとって、動物はどのような存在だったのでしょうか。
沖合に姿を現せた鯨に船で漕ぎ出して集う人々は、異なる世界に生きる命への驚きと関心を見せています。あるときは人知を超えた畏怖の対象であり、あるときは愛らしい存在でもある。江戸絵画をとおして、江戸時代の絵師たちの動物を見る眼差しが感じられておもしろかったです。

出展数も多かった森狙仙の作品。写実的な動物画を得意とした狙仙は、とくに猿の絵が得意でした。
絵を描くのに貰い受けた猿を飼っていた狙仙でしたが、あるとき山猿を見かけて、自然のままの姿が良いと以来山へ通うようになったのだとか。

そんな狙仙の描く猿の絵は、表情ゆたかでどこか人間臭い、愛嬌のある姿をしています。ただ姿そのものを描くのではなく、猿たちの絆をユーモラスに描いているようです。

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森狙仙「李花三猿図」/円山応挙「猛虎図」

江戸の動物画に外せないのが虎の絵。虎のいない日本では、猫がそのモチーフになったせいか、どこか愛らしい姿が見えます。空想上の動物をどうリアルに描くか。愛らしさが垣間みえつつも、その姿態や凄みを中国や朝鮮の作品から学ぼうとした試行錯誤の跡も見えます。そんな中、葛飾北斎の描く龍の姿は、見てきたように自然で迫力があります。

後半は身近な動物である犬や猫などに眼差しを向けます。長沢蘆雪のコロコロした犬たち。師である応挙も犬の絵をよく描いたらしく、ふたりの絵はよく似ています。蘆雪の犬たちも可愛いのだけど、草の引っ張り合いをしてる応挙の犬たちも、踏ん張っている様子が伝わって思わず笑みがこぼれてしまう。

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土方稲嶺「糸瓜に猫図」/伊藤若冲「鶏図」(三幅のうち一幅)/円山応挙「麦穂仔犬図」

中でも良かったのは、伊藤若冲の鶏を描いた水墨画。細密な彩色が美しい作品の凄みも良いですが、さらりと描いた水墨画には違った味わいがあります。

躍動感ある筆と、丁寧に描かれた羽の筋目描き。若冲も鶏を描くのに、庭に放し飼いをしていたといいますが、その鶏の自然なふるまいを観察する中で生まれただろう、ユーモラスな姿を独特のかっこよさで描いています。

そういえば、月とすっぽんを描いて、久しぶりにすっぽん鍋を食べて美味しかったというような書を書いている作品があって、花より団子、月よりすっぽんなんだなあと笑ってしまった。
猫の恋をテーマにしながら、猫が念仏を唱えている絵とか。これは発情期の猫の声が、南無妙法蓮華経と聞こえたのでしょうか。真摯にそう唱えれば誰でも救われると説いた教えをからかっているのかもしれません。

そんなユーモア盛りだくさんの展示会。テーマ自体は難しいものではなく、気軽に楽しめますが、異なる命を異なるそのままにとらえ受け入れる眼差しに誘っていくキャプションがとても良くて、つい図録も買って帰りました。
4月からは後期の展示で、作品は全入れ替えだそうです。行きたいけど時間あるかなあ。

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アルフレッド・イースト「富士山」1889年 府中市美術館蔵

常設展では、画家たちが描いた日本というテーマで、国内外の画家が描く日本の風景を展示。まだ江戸時代の雰囲気が残っている明治の日本を、油絵で描いた作品が多くて、この展示もとてもよかった。

アルフレッド・イーストは日本へ数ヶ月間滞在する間に、風景画を描き残しました。そのイーストの指導を受けた石川欽一郎や、そのほか小杉未醒の水彩画など、移りゆく日本を静かな筆で描きとめていて、しばらく見入ってしまう常設展でした。

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府中市美術館
企画展:動物絵画の250
常設展:画家たちが描いた日本の風景
2015年3月7日(土)〜5月6日(水)
動物絵画の250年 東京都府中市ホームページ
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