日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

旅日記 北海道 網走 - ウトロ - 小樽

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機内のアナウンスが「女満別空港、現在の天気は雪。気温はマイナス1℃です」とつげて、梅の花のちらほら咲いていた東京から、いっきに冬に逆戻りした気分になる。

本州に住んでいるうちに行けるところに行っておきたいなと思っていたものの、実際に行きたい場所をリストアップしてみるときりがなくて、それならまとめて行ってしまおうと思ったのがきっかけ。北海道はいちども行ったことがなかったので、この機会で足をのばしておきたいな。

なんなら北海道でもずっと北のほう、北方領土が見えるくらいまで行きたかったけど、冬の時期は公共機関がとまるみたいで、オホーツク海の流氷を見るところで手打ちにした。

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東京からもっとも少ない手数でオホーツク海を見にいくには、飛行機で女満別空港まで飛んで、バスで網走まで出るのが良さそう。羽田発午前の便にのると、午後には女満別空港、夕方すこし前に網走港へとたどりついた。

3月は北海道旅行には不向きらしい。冬期で立ち入りができない場所が多かったり、雪もとけはじめる時期なんだとか。この日も温かくて、流氷のある場所が遠いということで、流氷粉砕船おーろらは運行時間を30分延長してくれた。

ひとになれているのか、カモメは船と平行に飛んで、たまに手すりに止まってみせる。たちまち人気者になって取り囲まれても、当人はすまし顔。流氷は少しだけ見れた。午後15:00すぎの便の戻り路には、夕日が波間に照ってきれいだった。

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翌日は網走周辺の博物館をぐるっと一巡り。展望台のある流氷館、アイヌ民族をはじめ世界の北方民族にまつわる文化を紹介する北方民族博物館。ぜんぜん期待してなくて後回しにした博物館網走監獄が、いちばん楽しめたりして。

東映の映画でもおなじみの網走刑務所は、凶悪犯罪者が集まっていたというイメージが先行しているけれど、実際にはそんなことはなかったそうで、むしろ北方開拓のための労働力供給として軽微な罪の人も多く集められたのだそう。

北海道の開拓が、彼らの犠牲に成り立っていることは忘れてはならない、と説明があった。いつの時代も人の世は安価な労働力を必要とするのだ。

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冬季期間のため、ネットで調べたものとバスの本数が全然ちがって、次のバスまでずいぶん待たないといけなくなってしまった。しぶしぶ帰りはタクシーを使う。日が暮れる前になんとか釧路本線に乗り込めた。

網走から斜里駅まで、左手にはずっとオホーツク海が広がっている。たまにキタキツネの姿を見つけながら、一時間はあっという間だった。

次の日のあさ、知床にむかうバスを待つあいだ斜里漁港に立ち寄ってみた。ここは観光地ってわけでもないけれど、GoogleMapのストリートビューで見たら良さげな感じだったので、重い荷物をせおいながら、朝早く港へ向かう。

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網走ではちょこっとしか見れなかった流氷だけど、斜里漁港には流氷がおしよせて、しかも港の水は凍っているようす。ためしに貝殻をおとしてみたら、カツンと音を立てて、氷の上に乗っかってしまった。

湾口のほうは凍結をまぬがれていのか、水鳥たちの憩いの場になっているよう。何種類かの鳥たちが行き来している。風も潮の流れも止まって、しんと静かな朝の漁港だった。

オホーツク海は塩分の濃淡が二重構造のため、冬のあいだ塩分の薄い表面部分が氷で閉ざされるのだという。そのうえ凍りながら塩分をはきだすので、濃度の濃く重い水は海底へ沈み込んで深層水となり、赤道に向かってゆっくり流れてゆく。

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オホーツク海からの濃く冷たい深層水と入れ替わりに、赤道付近の暖かい海水が極地に向かって流れていくことで、海水が循環してゆく。流氷館でそんな説明を聞いたばかりだったので、いっけん静かな海の風景が、大きな循環の起点にあるのだと思うと、なにか厳かな気分になる。

半時間ほど過ごしたら、来た道をもどって斜里駅のバス停へ。ここから路線バスでウトロまで向かう。地図で見た感じ左が海沿いかな、と左側のシートに座った。他の乗客もみんな左の列に座るので、バスが傾かないか心配になってしまった。

走り出してしばらく、右の窓には雪をいただいた知床連峰に朝陽を浴びるのが見える。右列シートでもよかったな…。そうかと思っていると、木々の風景を抜けて左側に流氷の海がひらけた。

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ウトロは知床の手前にある温泉街。世界遺産にもなっている知床は、冬期はバスが通っていないみたいで、観光遊覧船が出ているのも夏だけ。北海道は夏来るに限るなあと思いながら、でも冬ならではの風景もたくさん見れたから、まあいいか。

ウトロの漁港あたりをうろうろしていると、キタキツネの姿を見つける。そろりと追っていくと、オロンコ岩の階段をのぼっていってしまった。ほんとうは私もオロンコ岩に登りたかったけど、ここも冬期は立入禁止。構わず登っているひともいたけど、小心者だから諦める。

漁港の散策に満足したところで道の駅へ。ランチタイムもすっかり過ぎて、仕方ないので缶コーヒーで暖をとったりコケモモ味のどら焼きを食べたりする。ここから宿までは少々歩くので、漁港の風景とはしばらくお別れ。

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宿の近くには夕陽台という展望台があって、夕暮れの風景が別格らしく、日没すこし前に行きたかったのだ。ところが夕陽台に向かう坂道の急で長いこと! ふらふらになって宿につくと、出迎えたご主人に「歩いてきたんですか」と驚かれてしまった。あれれ、送迎とかあったのかな。

部屋に荷物を置くと、カメラだけとりだして、さて夕陽台へ。さすがに北の果て、夕方となるといっそう冷え込んでくる。事前に調べたところ、夕方は人でたくさんになるということだったけど、冬だったせいか誰もいなくて、オホーツク海の夕焼けをひとり占めだった。贅沢!

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すっかり暗くなった道を、月明かりを頼りに戻る。街灯もあったと思うけど、この日は満月にちかくて、夜道がとても明るかった。

この日とまった民宿には一人づつ入る温泉のお風呂が二つあって、宿に戻って、いの一番に冷えた体を温めに離れのお風呂場へ。ここでも温泉ひとり占め。塩分が多い温泉なのか、湯船に体がぷかっと浮く。

晩ご飯は宿のご主人の手料理。お刺身から、きんきの一夜干し、貝のお味噌汁と海産物もりだくさんで、鹿肉のローストまで。ほんとうに美味しかった。とくにふっくらして味の染み込んだきんきとお米の相性といったら。初めて食べた鹿肉も美味しい。鴨肉にちょっと似ているかな。

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さて、一夜明けると、いっきに知床半島から南にくだって小樽まで、バスを乗り継いでむかう。この日はいちにち移動の日だった。念のため酔い止めドロップをなめて、オホーツク海の風景から内陸の風景へと移り変わるのを楽しむ・・・前に寝てしまった。

乗り継ぎの札幌で降りる。少々時間があるので観光できるかなと思っていたけど、小一時間ほど荷物をかついだままの観光は忙しいなあ。車窓から札幌市時計台も見たし良しとして、おとなしく小樽行のバスを待った。

小樽も坂の多い街。またしてもふらふら坂を登りながら、ふとひらけた風景に小樽の夜景が広がって、住宅街でこの光景! つかのま感動するも、宿につく頃にはすっかり疲れて、コンビニのおにぎりを夕食にしてバッタリ寝てしまう。

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明くる日は、夜に出港するフェリーを待ちながら小樽観光。

ウトロでは漁港をうろうろしたり、キタキツネの足あとを見つけては「人ならざるものの足あと・・・まだ遠くへは行ってないぞ」とかいう遊びで日がな過ごせたのだけど、急に小樽くらいの都会にくると、何をしていいか分からず戸惑ってしまった。

宿のご主人に駅まで送ってもらう(ありがたい)途中で「堺町が賑わってますよ」「ルタオが人気ですよ」といろいろ教えてくれたので、それじゃあと堺町から小樽運河あたりを散策する。

小樽の知識、まえにブラタモリ見たくらいのものしかないなあと思っていたけど、街を歩けば美味しそうなスイーツだらけで、寒いから休もうと理由をつけてはカフェでひとやすみして、なんだか散財してしまった。恐るべし小樽。

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ルタオの季節のデザート、ホワイトチョコレートの中に苺のソースが入っていて、さらに奥にはフリーズドライのレモンとレモン風味のケーキが入っている。チョコの重たい甘さから、甘酸っぱい苺、レモンの爽やかな酸味まで、食べてるうちに味も香りも食感も変化する。おいしい。

思いもよらずカフェ三昧してしまったので、小樽運河を早めに切り上げて次の予定へ。

前日スマホでぽちぽち調べたところによると、天狗山展望台の夜景がきれいらしく、日没にあわせてバスにのった。ロープウェイで5分ほどのぼると、スキー場らしき雪山にたどりつく。日が暮れるまでゲレンデの雪を踏みしめて散策して、薄暗くなってきた頃に展望台のほうへ。

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小樽の街が冬独特の青い夕暮れに沈んで、灯りがぽつぽつともりはじめる。ウトロの寒さが平気だったので、油断して東京でいちばん寒いときくらいの服装できたら、めちゃくちゃ寒かった。

凍えそうになりながらも暮れまで粘って十数枚撮る。あまりの寒さに夜の小樽運河はあきらめて、大して温かくないバスの待合室で、フェリーターミナルへのバスをじっと待つことにした。網走での、冬期のためバス時刻表がちがった事件のトラウマがぬぐえないのだ。

そんな心配をよそに無事バスは停留所に現れて、一路フェリーターミナルまで連れて行ってくれた。乗船手続きがすんだら、お土産を買い足したりして、定刻にはフェリーにのりこむ。

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重油のなつかしい匂いがする。子どもの頃は、沖縄本島に行くのによくフェリーに乗ったのだけど、今はもう本島と先島地方とのフェリーは運行していないみたい。小樽から出ている長距離フェリーも、出港は決まった曜日だけだったりして、本数は限られているようだった。

あかしあ号が港を離れて、小樽の灯りが少しずつ遠ざかっていく。

客室プランはいちばん安い相部屋タイプ。夜は早めに寝て、朝早くからコインランドリーで洗濯したり、廊下脇のテーブルで読書をしたり。大浴場まであるので、夕方二度目のお風呂に行くと、夜は気づかなかったオーシャンビュー。って当たり前か。いま海の上だし。

船は酔うかなと思ったけれど、酔い止めのせいか平気だった。港につく前にレストランで夕ご飯を食べていると、友人から「旅行楽しんでいる?今どのへん?」とラインが届いて戸惑う。今は日本海に揺られているのだ。この日、北陸は雨か雪だったのかも。あいにくの天気で雨雲が低く垂れ込め、水平線に雨脚が降りそそぐのが見えた。

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道東


小樽