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日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

プラド美術館展—スペイン宮廷美への情熱 @ 三菱一号館美術館

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今年の夏から秋への切り替わりは、しばらく続いた小雨の日が境目だったように思います。というわけで、そんな雨の日に行った三菱一号美術館で開催のプラド美術館展の感想を。

スペイン王室の収集品をもとにして、それぞれの時代をうつしこんだコレクションです。エル・グレコやベラスケス、ムリーリョ、ゴヤなど、スペインを代表する画家をおさえつつ、ルネサンスから19世紀まで、奇想の画家たちの作品をもくんで、ヨーロッパ絵画の流れを駆け足におう展示でもありました。

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みどころはヒエロニムス・ボスやヤン・ブリューゲルをはじめとした不思議な世界観の作品でしょうか。なかでも、ヤン・ファン・ケッセル「アジア」は奇妙な作品。当時ユーラシア大陸の文化などほとんど知られていなかったにちがいなく、ヨーロッパ世界の外側の世界をイメージしたのでしょうか。

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そこにあるのは、キリスト教世界のかなたの異端的な存在のすむ世界。奇妙な風景が並びますが、中には月明かりの美しい世界も。嫌悪に憧憬も混じりながらも、外の世界へ思いを馳せるようです。思うにボスやブリューゲルもまた、ヨーロッパの正統な世界の外側を見ようとしていたのかもしれません。

エル・グレコも二点ほど展示。小さな額のなかの「受胎告知」を眺めると、後年には画面いっぱいにひろがる暗澹たる空は、アーチ型の向こうに追いやられ、いくぶんか静かな構図です。割れた空間から差し込む光の劇的な描写。形を歪めてまで表現される、神秘への渇望。

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多くの芸術家にとって、特別な画家としておりおりに出てくるグレコの作品を、小品ながらじっくりみれたのは嬉しかったところです。

三菱一号美術館の雰囲気にあわせて、私的な作品に重きをおいた今回の美術展。ベラスケスは肖像画のほかに、個人的に描いたとされる風景画が展示されていました。そこにある何気ない時間を、ふと切り取るような一枚。おそい午後の光が差し込んで、城壁をひときわ明るく浮かび上がらせています。

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のちの印象派にさきがけて描かれた、うつろう光をとらえた作品です。没後ふたたび評価されるまでは、19世紀印象主義のおこりを待たなければなりませんでした。けれど今日の私たちには、さいわいに画家の目が見た光の質感に、思いを馳せることができます。

展示会の最後を飾るのは19世紀スペインの画家マリアノ・フォルトゥーニ。当時の欧米で人気を博したそうですが、はじめて聞く名前でした。日本やギリシアの異国情緒に傾倒したころのホイッスラーにどことなく似てる。水平の構図と粗い筆跡に描く光の感覚は、ウジェーヌ・ブーダンを思わせます。

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印象派にはいる少し前の、感覚的な表現が現れはじめた頃。このあたりの絵画がいちばん好きかもしれない。フォルトゥーニも日本趣味を取り入れた作品を描いており、アラブ文化へも関心を向けていたそう。オリエンタルな世界への憧れを感じさせて、スペインという土地を感じる作品でもあります。

フォルトゥーニの絵があまりにストライクだったので、図録も買いましたよ。ついでに修道院でつくられていたというお菓子も。ほろほろ崩れて不思議な食感。美味しかった!もっと買い込めばよかった。

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プラド美術館展—スペイン宮廷美への情熱 |三菱一号館美術館
三菱一号館美術館
2015年10月10日(土)~2016年1月31日(日)
10:00~18:00(金曜、会期最終週平日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで
月曜休館(但し、祝日の場合、12月28日、1月25日開館)
年末年始休館:12月31日、1月1日