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日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

桃山茶陶と「織部好み」 @ 畠山記念館

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畠山記念館は白金台にある美術館。おりしも雨のぱらつく日曜日、銀杏の黄色ばかりがまばゆい曇りの午後に行ってきました。この期間の展示は「織部好み」。桃山時代以降の焼き物に、大きな変化をあたえた古田織部。その影響を汲む器をあつめた展示会です。

出光美術館サントリー美術館の展示は玄人好みの印象がありますが、畠山記念館はその上をいくかも。なぜなら、作品の説明があんまりないから。展示キャプションをじっくり読む派の私も、その分、自分の想像力を働かせて、小さな展示スペースのわりに、すごく充実した時間をすごせました。

まず迎えるのは、伊賀焼の花器「からたち」です。織部好みのこれぞという一品にふさわしい、欠けといびつなかたち。焼締陶の荒い肌は水をたたえる岩のイメージ、とは、以前に出光美術館の桃山美術展でしいれた知識。緑の自然釉は、さしずめ水の通り道にうっすら苔の緑がかる岩肌でしょうか。

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伊賀花入 銘 からたち 桃山時代(重要文化財

テッセンなどのつる植物を生けると、涼やかながら野趣あふれる風景になりそう。せせらぎの流れる岩場に、ひょいと顔を出した紫の花。そう考えると、ごつごつした荒い肌も欠けた口も、自然にさらされて風化した岩を思わせて、なるほど名品なのだなとしみじみしました。

伊賀焼が水の気配を思わせる岩肌なら、備前焼は火のイメージです。緋襷(ひたすき)とは、焼き物どうしが触れ合わないように藁を巻いて焼いたものだそうで、藁の部分が赤い影となります。比較的低温で焼く備前焼ですが、その静かな炎は模様となって、いまだうつわの内で燃え続けているのでした。

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備前火襷水指 桃山時代(重要文化財)/割高台茶碗 朝鮮時代

降りかかる灰が高温にとけて自然釉となり、ざらりとした質感が景色をつくる、その模様のものを胡麻というのだそう。黄土のざらつきは乾燥した岩肌のようで、辛口の印象が味わいぶかい備前焼でした。

九州の高取焼から高取手鉢が二品でていましたが、これもまた水のイメージかな。釉薬のおおらかな流れや、水の流れをかたどったような曲線に、水の気配を思わせる伊賀焼と異なって、まるで水そのものの造形をうつわに写しているようです。

いびつさや自然の風合いを生かした質感は、大胆でおおらかな美のすがたでありましたが、美濃焼の志野、黄瀬戸などは、やや志向は異なって洗練された印象。他がひずみのあるものばかりだっただけに、黄瀬戸菊型鉢の花びらを模した端正なかたちには、はっと目を引く華やかさがあります。

しかし織部好みといえば、美濃の織部焼を外せるはずもなく。改めての発見があったのは、この織部焼のおもしろさです。黒織部筒茶碗は、漁師の網を干してある光景を模様にしているそう。鉄釉の黒で描かれる模様は、乱暴に引かれた縦線と、そのあいだを渡る半月形の曲線で、まるで子どもの落書き。

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黒織部筒茶碗 桃山時代/織部手鉢 桃山時代

けれどそれは、今日知られる抽象画の世界のようで、いったいこの発想をどこから得たのだろうと驚いてしまった。南蛮の陶磁器も意匠に取り入れたというので、着想の源はそこなのかな。自由を好む古田織部の感性が、20世紀美術に先んじて、踊るような図柄のうつわをつくらせたのかも。

とはいえ、織部焼古田織部の関わりは、じつははっきりと分かっていないのだそう。上野焼焼成に織部の指示があったと示唆する書状がある程度。織部好みとは、当時の人々が「織部っぽい」と思ったものが、そう各地に広がっていったのものかもしれません。

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畠山記念館ハンドブック 400円/からたち花器と織部珈琲碗のイメージ

茶道具には崇高さがあって、背すじのシャンとする感じがありますが、より実用のものである向付や酒呑、手鉢などといった陶器は、これになにを盛ると映えるのだろうと考えて楽しい。

曲線の美しく浅い高取手鉢は、手毬寿司だときれいかな。黄瀬戸の皿は菜の花のおひたし、山椒の実の爆ぜたかたちを模したという上野割山椒向付は、秋にちなんで名残の鱧の湯びき。織部焼の温かみのある幾何学文様は、珈琲なども合いそうな気もしてきます。

と、想像する楽しみもある古美術展でした。図録はないので、ポストカードと、開館50周年を記念してつくられたハンドブックを買いました。15ページほどの冊子ですが、イラストと畠山記念館収蔵の名品で解説される茶の湯の世界、買って得した感ある一冊です。

[秋季展]古田織部没後400年記念 桃山茶陶と「織部好み」
畠山記念館
平成27年10月3日(土)~12月13日(日)
休館日 月曜日
開館時間 午前10時~午後4時半(入館は午後4時まで)
入館料 一般 700円(600円)
お抹茶 500円(干菓子付き)*午前10時より午後4時まで展示室にて随時

http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/exhi2015autumn.html