日々帳

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[感想]琳派400年記念 岡田美術館所蔵琳派名品展 | 日本橋三越本店

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休日の夕方にもののついでで足を伸ばしてきました。まあデパートの催事場だし、ちょっとのぞいてくるかという感じで。と思っていたら思わぬ名品揃い。スルーしなくてよかった。

古典に主題をとる長谷川派の作品からはじまり、俵屋宗達本阿弥光悦尾形光琳・乾山、酒井抱一・ 鈴木其一、明治以降の展開まで、琳派の流れを駆け足で見る内容でしたが、これ置いときゃいいでしょみたいなのは全然なくて、こぢんまりながら濃い展示会でした。

ひとつ不満だったのは展示会場が狭かったこと。思ったより人が多くてゆっくり見れなかった。そりゃそうだ。じっくり堪能したければ箱根まできてねってことですね。商売上手だ。まんまと岡田美術館に行ってみたくなりました。

本歌取り 誰が袖図

「Whose Sleeves?」 ※今回の展示作品ではありません(誰が袖図の例にWikimedia Commonsより)

展示は長谷川等伯の流れをくむ長谷川派の作品からはじまります。今回のテーマのひとつである「本歌取り」(古典に主題をとること)が、琳派以前から始まっていたことを示しています。

「誰が袖図」は作者不詳ですが、和歌から主題を借りている点で「本歌取り」の系譜にあたります。

色よりも香こそあはれと思ほゆれ 誰が袖ふれし宿の梅ぞも

「誰が袖」の名称はこの歌からきているといいます。姿かたちを見るよりも、その気配を感じる方が趣がある。気配で人物を描く。そこに姿はないのに、想像させることでその存在感はより強まります。

少し前に「DOMANI 明日展」という若手芸術家展で見た橋爪彩さんの作品に、よく似ていると思いました。橋爪さんは「ヴァニタス」(寓意的な静物画)を現代風に描きなおしています。ものを語らないはずの静物から立ちおこる物語が、「ヴァニタス」と「誰が袖図」に共通するものとして感じられます。

琳派から横道にそれましたが、今回おもしろかった展示のひとつです。

光琳と乾山

尾形乾山の作品がたくさん見れたのも今回よかったところ。

実家の雁金屋が破綻していたにも関わらず放蕩三昧だった兄光琳と、陶芸を学び窯を開いて兄に絵付けを発注し生活を助けた堅実な弟乾山。今回の展示には乾山の絵もあったけど、色合いや丸みのある線といい、穏やかな性格が伝わるような作品。兄弟正反対の気質を見るようです。

弟が器をつくって兄が絵付けをした作品も展示。これ料理とか盛るのかなあと思ってしまった。兄弟仲むつまじさがそことなく感じられます。そのほかにも優美な色絵菊紋透彫反鉢や螺鈿蒔絵の品々など、工芸品も見応えがありました。

尾形乾山作・光琳画「銹絵白梅図角皿」18世紀 *表に法橋光琳の署名、裏に兄の書いたもので間違いないとの意の乾山の筆

光琳の作品も、金地に大胆でリズミカルな構図をとって、おおこれぞ琳派という作品が並びました。長谷川等伯の「松に秋草図」を背景に使用したビールのCMのせいか、こういう絵の前で飲む酒は美味いだろうなあと思ったり。いい塩梅に酔ってくると金地に白菊のリズムがさぞ心地よく感じられそうです。

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尾形光琳「菊図屏風」右隻 18世紀 *左隻に法橋光琳の署名

その点で行くと、秋には酒井抱一の「月に秋草図」も良さそう。月がすすきの穂を照らして銀色の世界。季節を愛でるとより旨味が増すのは、きっと絵も酒も同じです。

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酒井抱一「月に秋草図屏風」文政8年 *月は変色しているがもとは銀

光琳酒井抱一

京都の宗達、光琳の業績を発見し、編纂したばかりでなく、自らもその技法に学んで江戸琳派の祖となった酒井抱一。軽妙洒脱な宗達・光琳の線や構図に、繊細な季節感をまじえて、より洗練された画風をつくりあげました。

個人的好みで言えば、酒井抱一がいちばん好きです。しみじみとした詩情が感じられます。

これだけ繊細で丁寧な絵を描く抱一が、大胆で雅やかな光琳の作風にほれこんだというのも、あらためて考えると面白いと思いました。抱一も若い頃は遊んでばかりいたそうなので、遊び人に通づる心情があるんでしょうか。不真面目さというか。私の中では自分にないものに惹かれた説が有力です。

抱一の弟子鈴木其一の作品も数枚。其一はどちらかというと光琳よりの大胆な構図が魅力と思っていたのですが、展示の作品には師の抱一に似た丁寧なニュアンスの書き分けがみられます。新しい技法にチャレンジして画風を変えるなど、意欲的なところがあったのかもしれないと思いました。

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酒井抱一「白梅図」「桜図」19世紀前半/鈴木其一「木蓮小禽図」19世紀中頃

近代以降の琳派

最後は明治以降、西洋の文化が日本に流れ込んでくる中で、日本の美意識をさぐる試みとして琳派をひもといた日本画家たちの作品が並びます。その名をはずせない神坂雪佳や加山又造の作品はもちろんのこと、宗達「松島図屏風」にならった梥本一洋の「荒磯」、速水御舟の「桃李交枝」などが続きます。

梥本一洋「荒磯」は空間の配置やリズムのある線が心地よい。速水御舟の「桃李交枝」は、絹目に色が柔らかくにじんで、しっとりとした晩春を描く一枚です。

今更ながら、速水御舟の作風は琳派の流れを継いでいるんだなあとしみじみ思いました。作品によりますが、抱一の草花の絵に感じられる気品は、御舟の作品にも流れているような気がします。なんでも琳派にくくってしまうのも良くないのですが、今回は琳派の流れの力強さが感じられた展示会でした。

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速水御舟「桃李交枝」昭和3年 *絹本著色

2月からは種山美術館で「花と鳥の万華鏡―春草・御舟の花、栖鳳・松篁の鳥―」が開催されます。御舟の梅やら桜やらに出会える!ということで今から楽しみです。

* * *

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今回の図録とポスター。
メインビジュアルを飾る光琳の「松雪群禽図」は、図録ではなんと見開きに印刷されているという。涙。ポスター大切にとっておきます。

図録はページ数の割にはちょっと高めな2500円。でも印刷はとても綺麗。これまた見開きに載せてある速水御舟の「桃李交枝」などは、絹の目まで細かに見えて、とても満足。

さっくり見て帰ろうと思ったのに、図録まで買って帰る始末でした。


橋爪さんの作品集。


2013年秋に開館した岡田美術館。