日々帳

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孤高のリアリズム-戸嶋靖昌の芸術-展 @ スペイン大使館

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戸嶋靖昌という画家は、生涯、ほとんど絵を売らなかったのだそうです。

そのため、画家の手元に置かれていた作品の保存状態はあまり良くなく、額装の際には板の歪みを修繕せねばならないことも。また、カンヴァスを継ぎ足すなどして描かれた作品は、従来のサイズに収まらないものもあって、展覧会の際には苦労があったのだとか。

三島由紀夫自死に強い衝撃を受け、以来は、名誉や金銭ではない、ただ存在の根源にふれようと描き続けた画家。スペインに渡り、プラド美術館へ通う日々で、バロック美術に影響を受けた戸嶋は、その精神性までも、どこか鴨居玲を思い起こさせます。

あるいはそれは、彼ら個人の特質ばかりではなく、ある種の時代性だったでしょうか。

生涯に渡り、名誉も金銭も求めなかった崇高の人。それは、絵画を権力から奪還し、商業から作家の手に取り戻した、その果てにある孤高であったかもしれません。

光と陰におぼろに浮かび上がる量塊、その存在性。肉体の朽ちゆくほどに、鮮明になる魂の清らかさ。しかし、画家がとらえた美を、私たちの目の前によみがえらせ、永らえさせるのは、評価という権威、商業という営みでしょうか。

今年5〜7月、府中市美術館「炎の油画家5人」展で人物画など数点が展示され、11月にはスペイン大使館で個展を開催。来年には書籍も発売される予定で、露出も増えるだろうとのこと。

マチエールを活かした光と影で描く街並みはユトリロを、内面深くを描き出す肖像画はレンブラントを思わせますが、写実的な絵のうまさも感じさせて、ずっしりと見応えのある画家でした。今後、展示会などで見る機会が増えると嬉しいなと思います。

孤高のリアリズム-戸嶋靖昌の芸術-
スペイン大使館
期間:2015年11月5日(水)~28日(土)
時間:月~木 10:00-17:30 金・土 10:00-15:30
*入場無料
http://www.shigyo-sosyu.jp/expo/realismo_solitario.html:html