たまたま日曜美術館で紹介されているのを見て、これめっちゃ好きな感じのやつや!と思い、次の週にさっそく行ってきましたよ。
ロバート・ハインデルはもとはイラストレーターだったようで、上司に余ったからと譲ってもらったチケットで、バレエの舞台を見にいったことが、彼の人生を変えるきっかけになったのだそう。以降は、ファインアーティストとして、バレエやミュージカルのダンサーたちを描きました。
タイム誌の表紙を手がけるほどの売れっ子イラストレーターだったハインデル。フロアでは、その頃の作品、ホロヴィッツやカラヤンの肖像などを展示。それらの作品もとてもよかったです。
1992年に来日して以来、能や歌舞伎の作品も制作しています。バレエのダンサーが、身体の線の美しさを描いてるのに対して、能や歌舞伎では、能面や衣装など、身につけているものを印象的に描いていて、興味深く感じました。演者の姿は消え、人の気配ののりうつった衣装だけが浮かびあがる。
生涯のライフワークとなったのは、レッスンをうけるダンサーたちの姿でした。練習中の苦悩やひたむきさ、うまくできたときの喜びなど素朴な感情のほうに、気持ちを惹きつけられたようです。
光と影のあいだに痕をとどめる、身体という現象。光や、ときに影にまぎれて、輪郭をおぼろにするその造形は、動きをとらえようとする主観的な意識に映る像を、描きとどめているようです。その一瞬の中に、身体の造形も、ダンサーの感情のきわまりも、鮮烈に焼きつく。
私たちの存在は、身体に宿るのか、それとも身体は、その気配がのりうつった器に過ぎないのか。
レッスンフロアの床に貼られたマークテープを、ハインデルはしばしば印象的に描きました。ダンサーたちが立ち位置を確認するテープと、彼らの影がおちる床を描いた「フロアーマークス」シリーズでは、その存在は、見えないからこそ強くただようものとなっています。
舞台衣装、影、練習の跡がのこる床。身体をはじめとした具象のものに映し出される、存在の鮮やかさとはかなさを感じる、ハインデルの作品展でした。
没後10年 ロバート・ハインデル展―光と闇の中の踊り子たち―
会期:2015年7月4日(土)~7月26日(日) *会期中無休
会場:そごう美術館(横浜そごう内)
開館時間:午前10時~午後8時(入館は閉館の30分前まで)
入館料:大人1,000円(800円)、大学・高校生800円(600円)、中学生以下無料