日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

旅日記 京都・知恩院、建仁寺 編

旅の記録、最終日です。行きたいリストに入っていた建仁寺が年末は閉館してたので、年明けも1日寺巡りを設けました。東山周辺だと人がごった返すのは必至のこと。それでも建仁寺とセットで行くとしたらここかな。ということで浄土宗の総本山、知恩院へ。

八坂神社の南側は清水寺があって、金閣銀閣清水寺という京都の三大人密度が高い場所のひとつですが、北側になると少し人が減る。このあたりの通りも、古くからよく整備されている感じがあって、歩いてて気持ちのいい場所です。

知恩院

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年明け早々の知恩院は、終始お経が読み上げられ、焼香に列ができ、神社のお参りとはまた違った年始の風景がありました。この旅でいろんなお寺に行ったけど、浄土宗は生活と密着してる感じがある。

拝観料をはらうと、方丈庭園に入ることができます。集会堂から方丈へ渡る廊下が、歩くたびさえずるような音の鳴る鶯張り。方丈内は撮影できないのですが、敷居から中を見ることができて、狩野派絵師の描いたという絢爛な襖絵に、しばし見入って佇む。

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鶯張りは御影堂から小方丈までの廊下に渡りますが、その御影堂は2019年まで改修工事中です。代わりに、阿弥陀堂から御影堂までの渡り廊下*1を行き来してみたり。集会堂と方丈をつなぐ廊下もそうでしたが、歩き方のせいか、あんまり鳴らない。

しんとした中で鶯の声を聴きたかったけれど、人が多い方が音を楽しめるかも…前を行く人のあとを歩いたりして、やっと、これこれ、この音。別称「忍び返し」とも呼ばれ、侵入者をふせぐ仕掛けらしいですが、もしかしてこれ私、忍者の素質あるんじゃない。

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まだまだ見足りない知恩院でしたが、ここらで切り上げて、急ぎ三条河原町へ。待ち合わせのお店へ向かう途中で友人と合流して、ほっと一息。三条河原町の角に珈琲店なんてあったかな? と思ってたのだけど、エレベーターで5階まで上がるようで、なるほど印象にないわけです。

店内こじんまりしてますが、テーブルはゆったりめ。カウンターに座って、ケーキセットを注文。珈琲の評判を聞いてたけど、チーズケーキも濃くて美味しい。カフェオレを頼んだところ、友人の注文した葦島ブレンドが美味しくて、次来るときは珈琲にしよう。

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すっと入れた店内でしたが、少したって気がつくと小上がり床の外に待ち列ができてた。いつもはここまで混んでないねんで〜と友人。お店の雰囲気はゆったりしてるので、珈琲の時間を楽しみながらも、少し早めに席をたちました。

帰りぎわ振り返ると、店内を飾っていたワイヤーアートがふと目に入る。音楽モチーフのオブジェに混じって、弥勒菩薩がちょうど背後の掛け軸に収まって見える…!なんだかこれまで見てきた禅寺の窓や庭のちょっとした仕掛けみたいで、気持ち盛り上がってしまった。

建仁寺

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建仁寺も京都を出てから知ったお寺です。もっと外れにあるのかと思ったら、花見小路の小洒落た通りの先にあって、しかも風格ある。なんでも花見小路、もとは建仁寺の領内だったそうで。

今回の旅で、光悦寺、妙顕寺あたりが好みかな、と思ってたのですが、最終日になって、建仁寺がダークホースみたいに、後方からいろいろ抜き去っていきました。光悦寺の寂しい感じや、妙顕寺の知る人ぞ知る感もいいのですが、建仁寺はどうかというと…

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俵屋宗達風神雷神図屏風」(キヤノン「綴プロジェクト」デジタル複製)

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海北友松「雲龍図」(キヤノン「綴プロジェクト」デジタル複製)

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海北友松「山水図」(キヤノン「綴プロジェクト」デジタル複製)

お寺ごと美術館みたい。
とは言っても、複製品なのですが。いやいや、お寺の空間で見れるのは本当に幸せなことです。

少し前に日本でもコレクション展が行われた日本美術の収集家ジョー・プライスさんが、インタビューで(掛け軸や屏風絵の魅力は)展示ケースでは伝わらない、自然光で見なければ、というようなことを言っていたのですが、その言葉を思うと、これ以上ない鑑賞空間ではないですか。

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自然光もそうだけど、障子の向こうの季節ごとの景色とか、朝夕の空気とか。そういうものにさらされながらある感じが、すごいよかった。

海北友松の雲龍図はやっぱりかっこよくて、龍と一緒に写真を撮る人がたくさん。斜陽のあたる西の間の山水図は、たっぷりとった余白に大気を描くようで、もう何時間でも座っていたい。東の間の花鳥図は、筆の走りの鋭さはどの絵よりもいいのだけど、夕方どきは光が入らず、朝のほうが良さそうです。

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東京国立博物館での「栄西建仁寺」展では、鎌倉幕府が庇護した臨済宗と、武人の時代とともにあった禅の文化という側面を見ることができましたが、海北友松の気迫ある筆をはじめ、建仁寺にもその武人文化の名残りを感じられるように思いました。

東陽坊なる茶室もあって、豊臣秀吉が催した北野大茶会で、千利休の高弟・長盛が担当した副席とのこと。小さなにじり口からうす暗い室内を眺めると、刀をおいて、対一で互いに向き合うというのは、武人の時代の極みでもあるようで、また文人の時代へと軸を変えていく予兆のようにも思えるのでした。

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つい襖絵ばかり見てしまいますが、宇宙の根源的形態をあらわしたという「〇△☐乃庭」、三尊仏にみたてた石組みをおく「潮音庭」など、庭もよかった。潮の音というくらいだから、海を想定してるのかな。冬でもきれいだったので、ほかの季節はさぞかし美しかろう。

方丈前庭を眺める廊下に座って、夕暮れのひととき写真を撮ったり、おしゃべりしたり、思い思いの時間。お寺が広いせいか混んだ印象もなく、閉館のアナウンスが流れるまで、のんびり過ごしました。

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襖絵のほかに、法堂の天井絵、双龍図や、現代の作品も掛け軸なども寺院内を彩る、まるごと美術品みたいな建仁寺です。

あと、建仁寺を開いた栄西禅師は、喫茶の文化を日本に伝えた人としても知られているので、別棟の清凉軒で抹茶をいただけたり、あるいは写経をしたり。朝来て夕方までいれるなあ、と、ぽつり友人の言うのに深くうなずいたのでした。

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建仁寺の西の門を出たところで、気を惹かれる甘味処があって、ついつい立ち寄り。明治からの老舗だそうで、細い路地の向こうに坪庭があるなど、町家づくりの雰囲気が残る空間でした。

夜なに食べたい? と聞かれて、オーパの裏の焼き肉やさん! と答える。そんなんでええの? うん、モクモクしながら焼き肉食べたい。すると早速電話してくれて、今満席だけど、18時ごろなら入れ替わりで空いてるはずやて。なんかふんわりした返事だなあ。お店をでて、裏寺町通まで散歩がてら歩く。

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焼き肉やさんはちょうど空いてて、カウンター席につくと、さっそくカルビとホルモン盛り合わせを注文。しばらくして気づいたけど、このお店ご飯頼んでる人率高い。前に一度来たときもそうだったな。と、ご飯二人分注文。一人焼き肉の女の子がぽつぽついる。それから客の回転が早い。ひと皿分食べたら、夜の街に消えていくのだろうか。ここは前哨戦なんだろうか。

二人ゆっくり焼き肉を楽しんで、満腹になったところでお店を出ると、今更ながら表の壁に、なにやらオリジナルキャラクターが描かれているのに気づく。美容と健康に!なんて言ってる牛。女性客にもしっかりアピールして、抜け目ないモクモク系焼き肉やさんでした。

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*1:公式サイトでは鶯張りとは書いてないですが、多少音がなって、行き来する人も音を楽しんでる様子でした。