日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

旅日記 京都・年の瀬編

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冬の京都を自転車でぐるぐるまわり、すっかり冷え切った体で滋賀の友人宅についたのが夜9時ごろ。お風呂あがり準備してくれたこたつにもぐりこんで、枕代わりと勧められた健康ボールを頭に敷くと、液晶テレビのこちらを向く傾き具合のなんと絶妙な。最適化すごい。

いつもは彼女のスペースでごろごろしていると、友人が「明日なにするん」と尋ねてくる。

さすがに明日はゆっくりしたいなあ、大晦日だし。「スーパー銭湯近くにあったら行きたい」というと、彼女は気難しげに首をかしげて「銭湯な、潰れてん」なんと。「雄琴の方に出ればあったと思う」なんでも最近、駅名が『雄琴温泉』に変わったらしい。んーでも車出してもらうの申し訳ないしなあ。

京都タワーにも銭湯あんで」それはさすがにそっけなすぎる。どうせ京都まで出るなら昔ながらの銭湯に行きたい。と、京都のレトロ銭湯を紹介するサイトを教えられたので、どれどれ。見てみると、うおお、全部気になる。

京都 銭湯ポータル【裸で見る芸術 京都の銭湯】

錦小路の錦湯も良さそうだけど、むらさき湯もいいな。というか船岡温泉、国の有形文化財ってすごくない? 「ついでに観光してきたらええんちゃう」ん? なんか他人事。一緒に行ってくれないの。「部屋の掃除がまだ途中やからな」わー! ほっとかれるやつだ!「人聞き悪いこと言いなや 笑。龍安寺とかよかったで。船岡温泉あの辺りやし、ちょうどええやん」

そんなわけで翌朝気づいた時には、レンタルした自転車のハンドルを握りながら、八条通りに立ってたのでした。

上賀茂神社

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また来てしまった。

実は大晦日にくるのは二回目。前によった時は、神社の人が足早に行き来する他には、人の気配のない静かな境内でした。冬の低い日差しが差し込んで、境内を流れる小川のせせらぎに光が金色にはねる。静けさのぶん、清浄な雰囲気を味わえたのでした。

この日は参拝客の姿がぱらぱらとあって、次第に知名度もあがってきたのだなあと。

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いつもは社寺に行っても、参拝しないか、世界と人々の安らぎを祈るだけの私ですが、この日は個人的に絵馬を買ってしまった。楼門から小川をはさんで向かいにあるお社は、紫式部が縁結びのお参りに通ったのだとか。ハート型(双葉葵)の可愛らしい絵馬でありました。

絵馬はこの他にもいろいろあって、別雷神(わけいかずちの神)を祀っているということで厄除であったり、はたまた初夏のころ行われる賀茂競馬にあやかって、競馬の祈願が書かれてあったり。新年を明日にひかえて、一足早いそわそわとした賑わいのある境内です。

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神社の東側は、室町時代からの門前集落で、神職にたずさわる家系と農家の人びとが代々すまう地域、とは最近知ったのですが、神社からの清流が道沿いを流れる、古いながら整いのある住宅地。

西村家庭園は賀茂の社家(かものしゃけ。美味しそう)のお庭を見れたり、少し行くと大田神社という初夏にはカキツバタのみごとな神社があり、この住宅地を自転車でゆるゆるくだりながら、裏通りの小さなお店を見つけつつ、北山通りに出るのも楽しい。

今日は方向がちがうので、賀茂川沿いまで戻って、一路、西大路通りをめざします。

龍安寺

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きぬかけの路は、金閣寺龍安寺仁和寺を結ぶ観光道路。地図に聡い人なら、一目見て山の麓の起伏のある道だと判別つくはず。私はというと、観光客でごった返す金閣寺を華麗にスルーするも、長い上り坂に差し掛かって、ああしまったと声に出していたのでした。

龍安寺についたのが14時ごろ。冬の日差しは西日に変わって、こころなしか急く思いで拝観。龍安寺はこの旅いちばんの賑わいのあるお寺でした。

前に東京国立博物館の展示で、龍安寺・石庭の四季を4K映像で巨大スクリーンに魅せるみたいな企画があって、その時は、桜や紅葉はもちろん、積雪や梅雨、眩い夏まで疑似体験できたので、今回寂しげな庭を眺めて、なぜ冬にきたのだろうかと思ったものです。

とはいえ、見どころはお庭以外にも。方丈(本堂)の襖は開け放たれて、石庭から差し込む冬の光で満たされていました。

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かつては狩野派の描いた襖絵だったものが、廃仏棄釈で散逸してしまい、今のものは昭和に入ってから描かれたのだとか。全面に描かれた昇り竜の襖絵はなかなか壮観です。

帰ってから友人に「小さいお庭だった」というと、「あれは意味が面白いねんで」と返されて、後からいろいろ知ることとなり、ちゃんと調べておけばよかったなあと後悔。作庭者は複数説があるものの、断定にはいたらず、どういう意図なのかもはっきりしてないのだとか。

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よく知られているのが、15個ある岩が、どの角度から見ても、最後の一個が見えないように配されているのだそう。なんでも、東洋で15という数字は完全をあらわすのだそうで。

本法寺の十(つなし)の庭もそうでしたが、最後のひとつは見るものの心の中にあるということ。あるいは、常照寺の欠けた円の吉野窓のように、完全なものからあえてずらし、足るを知る、自然の摂理の前に謙虚であろうとする人の姿を表しているのかもしれません。

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他にも「虎の子渡し」という故事の再現だとか、遠くは小さく近くは大きく見える人の眼の見え方にもとづいて、石の配置や屏の高さを調整しているのだとか。源光庵もそうでしたが、禅宗のお寺は面白いなあと。小さくとも見どころの多い石庭です。

枯山水の庭を堪能したあとは、回遊式庭園をぐるりと散歩。ここは冬だというのに苔も素晴らしくて、紅葉が少し残っていたり、梅の花が咲いてたり。これまで色味のない風景ばかりでしたが、ここにきてようやく木々の彩りを楽しめました。冬の空気に色彩は冴えて、鏡容池の紅葉をうつす水鏡もきれい。

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帰りにお土産やさんで、夜のおつまみにオリーブやら漬物を買ったりして、さて目指すは船岡温泉。きぬかけの路は西大路通りを隔てて市内のほうは鞍馬口と呼ばれる通りでして、庶民的な通りをしばらく行ったところに、昭和初期から続く大衆浴場が現れます。

船岡温泉

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というわけで、この日のメインイベントは、歴史あるお風呂やさん、船岡温泉です。大正時代に建築された料理旅館を、昭和初期に銭湯に改修したのだそう。まだ明るいうちでしたが、人の出入りもぱらぱらあって、ほどよく賑わっているもよう。

のれんをくぐって番台のお婆さんに料金を払う。もとは旅館とのことで、館内の装飾の絢爛さに卒倒しそう。透し彫りの装飾をほどこした欄間に、天井には男女の脱衣所をにらむ鞍馬天狗、古びた時計。そうかと思えば、脱衣所と浴場の間に坪庭があったりして。銭湯の域を超えてる。

年季を感じる檜風呂で温まりながら、でも竹殿湯みたいなこじんまりした熱湯風呂も捨てがたいなあ。と、湯けむりの奥に外へと続く扉が見える。なんとこの銭湯、露天風呂があるんですよ。立派な石組みの途中から竜が水をはいてる意匠で、木々が枝を伸ばし、シダが生え、野趣あふれる露天風呂です。

外湯にはあまり人がいなくて、地元の人はあえてまで入らないのかな。きれいな女の子が二人、韓国語? でなにやら話しながら足の長さ比べをしてて、こんな光景…わたし女でよかった。などと思いながら、のぼせない程度に温まってお風呂場を出ました。

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お風呂上がりのお約束、瓶の牛乳を飲み終えたら(いつもは黒酢派)、よく冷えた外へと繰り出します。あたりはすっかり冬の宵。群青の空気に沈む商店街がありました。

船岡山公園のそば、建勲神社前を通って、北大路通りへ。この辺りは今宮神社や大徳寺があって、ゆっくり見たい場所のひとつだけど、もうすっかり夜なので次の機会に。通りにほとんど車もなく、しんと静まって、大晦日だなあとしみじみ。

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この日は北山から北白川までの本屋さんをさっと一回りしたかったのだけど、携帯ショップになってたり、場所を失念したりして、ようやくたどり着いた大垣書店の併設カフェで珈琲を一杯。もとは大学裏の小さな本屋さんが、多店舗展開してすっかりお洒落本屋になってました。

琵琶湖湖畔

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除夜の鐘をつくお仕事を終えて、友人が帰宅したのが深夜の1時ごろ。一緒にケーキと澪ドライで年明けをお祝いしました。翌日行きたいところを聞かれる。滋賀といえば思いつくものは、そう、ピエリ守山、生ける廃墟として一躍名を馳せたショッピングモールです。

新年明けて昼ごろ、琵琶湖湖畔をドライブしながら、ショッピングモールへ。新年ということもあってか、はたまたすっかり再起をはたしたのか、館内なかなかの賑わいでした。

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新年バーゲンでお揃いのバックを買ったり、動物ふれあいランドで切ない気持ちになったり、イベントスペースのバランススクーターで家族サービスをするお父さんになごんだり。

カフェで夕暮れに沈む琵琶湖を眺めながら、ケーキをつつき、友人の結婚式にすごく気をつかったんだという告白から、女どうしの駆け引きの話や、いやでも駆け引きする女を男は追っかけたくなるもんだって誰それが言ってたとか、少ないサンプル数で男女の普遍性を語ったりして、楽しかったです。

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帰りしな唐突にラーメンが食べたくなった友人に行き先をお任せしたものの、ラーメン屋さん軒並み閉まってる。初詣帰りのお客さんつかまえるべく開いているだろうと思ったのが間違いで、個人経営がほとんどだしな、でも天下一品まで閉まってる。なんていいながら琵琶湖を半周。

諦めかけた頃、ようやく見つけたラーメン屋さんで、赤ラーメンと餃子と炒飯と酢豚を注文。他にお客さんもなくて、ちょうど正月番組をやっていたので、お店の方となんとなく一緒になってテレビを見るなどして、美味しいラーメンをいただきました。

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関連URL

北山通

感想DEMO:北山バブル建築群。
そしてもう一つ、私が北山に名をつけるならここは「建築家・高松伸の聖地」なのである。[…]現在日本全国のバブル建築は存続の危機に直面している。流行らない建築として、建て替えが頻繁に行われているのだ。[…]このままでは高松建築は10年以内には間違いなく取り壊されているだろう。そうなる前に北山建築巡りの是非ともおすすめしたい。

そういえばむかし、北山周辺で関西の建築めぐりをしてるっていう大学生に出会った記憶がある。
2015年末時点では「Trees」「B-Lock北山」は残ってたような…松ヶ崎のほうが目を引く建物があったかな。

北山通りには安藤忠雄設計の「京都府立陶板名画の庭」もあったりする。外と中の切り替わりが曖昧な感じは、けっこう好き。

ここは…思い出してたら絶対行ってた。北山駅から東へしばらく歩いて、ノートルダム女子大(通称ダム女)の南側、閑静な住宅街にひっそりとある私設美術館。美術品にかこまれて一人過ごせる贅沢な場所。

船岡温泉