日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

鈴木理策写真展 意識の流れ|東京オペラシティアートギャラリー

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新宿初台のオペラシティーアートギャラリーは、住んでいる路線が近かったときによく行っていたけれど、今回すごく久しぶりに足を運んできました。

開催していたのは鈴木理策さんの写真展。会場入る前に、写真撮影可ですがフラッシュや来場者の写り込みに注意してくださいと説明があって、撮影OKなのかーとびっくりした。フロアごとに照明の工夫があって心地よい空間で、写真をぽちぽち撮れたのは嬉しかったです。

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作品を見ていると、セザンヌの言った「モネは一つの目に過ぎない。しかし何という目だろう!」という言葉がふと思い浮かんだり。ストーリーを見る目ではなく、ただ観察する目。けれども、その目は光の表情を鋭く鮮やかにとらえている。

鈴木理策さんのことばで、「レンズは人の知覚を拡大して能力を拡張させるもの」というのがあって、なんだかしっくりきた。目で見えるものとはちがう、光をとらえる拡張器官。目とレンズのとらえるものの違いを、錯覚というズレを利用して、より意識的なものにしている。

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と思っていたら、モネの睡蓮が! 自然光のそそぐ明るい空間に、水鏡をテーマにした作品がならぶ。

どこか印象派の絵画のイメージがあるのは、光や風といったうつろう一瞬を切り取っているからかな。中には時をとめたような硬質な作品もあるけれど、その対比から、より光の表情が印象にのこる。

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インタビューを読んでいると、シャッターを押すタイミングを、光や風をきっかけにして、周囲の環境にまかせるという話があって、だからかな? と思ったりした。

目にうつるものは、そういう瞬間かもしれない。なんてことない、意識のながれのさきにある、いつもより青い夕暮れ、歩いててふと見上げたときの、光をはねる木々の葉とか。

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最後の部屋は、雪と桜の作品、それから春をむかえた花々。

今はコンデジで撮ってる程度の私だけど、こういう写真どうやったら撮れるかなあ。と考えたりした。
フィルムカメラの時代に一眼レフをさわったことがあって、あの感覚が好きだなあと思う。

いつもISO感度50のフィルムを入れて、開放いっぱいにしてシャッタースピードで調整してた。偏ってんだけど。デジカメ主流になってからは、めっきりさわらなくなってしまった。

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鈴木理策さんがフィルムで撮る方だということを、後から知ったのだけど、フロアにいて自然とフィルムカメラのことを考えたのも、どこかつながっているもののような気がした。

ISO感度と絞りとシャッター速度の数値を駆使して、そこにある光の存在感を決めていく。仕上がりの良し悪しまでは分からないけれど、自分の中で光のバランスをとっている感覚は、けっこう楽しい。
そうやって撮られた写真には、正しさはなくても、光のてざわりがある。

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写真展のあとは、水彩画コレクション展を見た。ザオ・ウーキーや李禹煥さんの水彩画があったりして、小品ながらじっくり見てしまう作品ばかりでした。

奥のフロアは難波田龍起、史男の水彩画。それぞれクレーやデュフィを思わせる、色彩の響きがある作品。父である難波田龍起の水彩画は、けれどクレーほど抽象的ではなくて、もやもやした中に陰影や光の意識がある。存在の気配がある。

波田史男の作品は、軽やかな線で幻想的な世界を描きながらも、響き合う色彩がより音楽的です。父子の絵は違うようで、どこか通じ合っている。幻想性に隠れた生々しさとか、そういうことだけじゃなくて、二人とも同じ種類の音楽を聴いていたというような。

いろいろ感じ入ることのできる時間でした。

帰りにミュージアムショップに寄る。すごい小さなスペースなのに、散財しそうで震える思いでした。写真集などはひとまず見ないようにして、ちょっとした書籍と、気が付いたらCD買ってた! 他にもほしいものたくさんあった。あそこにはしばらく近づかない。


鈴木理策写真展 意識の流れ|東京オペラシティアートギャラリー
2015年7月18日[土]─ 9月23日[水・祝]東京オペラシティ アートギャラリー
鈴木理策写真展 意識の流れ
約8年ぶりとなる東京での大規模個展
2007年に東京都写真美術館で開催された個展「熊野、雪、桜」から約8年。鈴木はライフワークともいえる熊野での撮影を継続し、雪、桜のシリーズも制作を続けてきました。本展はこれらの新作・近作に、新シリーズ「水鏡」「Étude」を加え構成されています。

https://www.operacity.jp/ag/exh178/