日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

ヤギの気持ち

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ここのところ雨ばかりで、外へ出るイベントも控えぎみ。少し前に撮ったヤギの写真でお茶をにごしてみる。

ヤギを眺めていると、だいたいの心理には察しがつく。お腹がすいたとき、甘えたいとき、縄張りを主張しているとき。二つ以上の心理がブレンドされて、なにやら訳の分からない行動をするときもある。梅雨や秋の少し涼しくなるころには発情期もあいまって、複雑な心理を見せ、ふだんのヤギより見ていて楽しいものがある。

ヤギ牧場には雄ヤギが二匹しかいないので、成獣ヤギのほうを王者とよび、子ヤギのほうを王子と呼んでいる。この二匹の血のつながりははっきりとは分からないが、あまりにも顔が似てるので、異母兄弟の関係ではないかと思っている。

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王子フェリックは生後10ヶ月で、たくましくもなってきたけど、まだまだ母ヤギに甘えたい気持ちをもっている。ある時、母ヤギのおしりに鼻をすりよせるので、つい成り行きを見守ってしまった。雄ヤギにとって雌ヤギのおしりは、セックスアピールポイントなのだ。

しばらくして気が済んだか、母のそばを離れたフェリックを見ていると、発情期の気分と、母親に甘えたい気持ちのブレンドが引き起こした行動だったのではないかと推測されるのだった。

ふたつの気持ちが混ざり合うこともあれば、葛藤をおこすケースもある。のんびり暮らしているように見えるヤギだけど、一日のうちで取り乱すことがある。それは人間が餌をもってくるときだ。お腹が空いているときに道の向こうから草の山が近寄ってくるもので、このときヤギはたまらず柵の前を右往左往するのである。

この日フェリックはすでに草をたくさん食べて、ある程度みたされた状態であった。ヤギたちがハングリーでないこの時間をねらって、私はカメラをもってヤギ牧場にちかづいた。

フェリックは私を見て餌を連想したのだろう。気をそわそわさせたが、かといって、この人間は草をもっている様子ではない。自分もそうお腹が空いているわけでもない。そこでフェリックは平静をよそおって、そばに座っていた雌ヤギのシンディーの背中に片足を乗せたのだった。

この一件が、私がフェリックを王子と呼ぶようになった所以である。