日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

ボーカロイドは不気味の谷をこえるか

この前、ボーカロイドを学校のお昼の放送で流すのどうなのって話題がはてなブックマークであがっていて、すっかり下火になったと思っていたけど、今時の10代まだボーカロイドなんて聴くのかなって思ったら、じつは昨年2016年はふたたび盛り上がりがあったそうで、ひさびさにランキング聴いてみようかなって思ったのがさいご、朝になるまで曲を漁ってしまった。

私も高校生のときに放送部の友達がいて、お昼に流したい曲あったら教えてって言われて、なにかCDを提供した記憶があるのだけど、何だったか覚えてないな。でもお昼休みに自分の好きな音楽が流れるのは、ものすごく恥ずかしかった気がする。

その頃はフレンチ・ポップとかが好きで、ウィスパーボイスのボーカルを「その声きらい」って友達に言われて、当時は「まあ、ふつうの歌い方じゃないもんね」と思ってたけど、今日まで覚えているってことは、それなりにショックだったのかな。「ボーカロイドの声を受けつけない人もいる」って意見を読んで、そんな昔のことを思い出した。

ボーカロイドが話題になり始めたころ、私も「機械音が好きなんて逆張りで言っているんじゃないの」くらいに思っていたけど、ホットエントリーにオススメ曲まとめがあがっていたときに聴いて、がっつりはまってしまった。でも今日書きたいことは、私のボカロ歴とかそういうことではなくて、機械の声は人間の声の代替品になるか?ということです。

先に2016年発表の作品で、声的にすごいと思った曲から。「VOCALOID4 Library Fukase」は、2016年に発売された新しいボーカロイドライブラリです。

この曲はほとんど声の調整をしていないそう。中音域が自然な表現になる特性が活かされていて、とくにサビの部分は機械音と言わなければ気がつかないのでは、と思います。

私の見てきたなかでもボーカロイドの機械音を人間に近づける試みというのは、いろいろとされてきていて、製品開発側でも工夫を重ねていくのですが、制作者(ボカロP)のほうでも聴きやすい声の表現を試みてきた流れがあります。

たとえばボーカロイドブームの火付け役にもなったlivetuneさんは、初音ミクのボーカルにオートチューンのエフェクトをかけています。機械音でもエフェクトをかけて人の声の加工に見立ててしまえば違和感も薄れると考えた、かどうか。今ではオールディーズとも呼べる曲ですが、この頃から、ボーカロイドの声と人間の声の距離感の模索があったのだなあと思います。

2010年に「初音ミクAppend」が発売され、6種類の声のライブラリが追加されました。とくにsoftやdarkは輪郭のぼやけた柔らかい声質をしていて、こうした声の調整で初音ミクのソフトな表情を活かしたバラード曲が出てきます。

glow

glow

  • keeno
  • アニメ
  • ¥250

小夜子 feat.初音ミク

小夜子 feat.初音ミク

  • ミキト(みきとP)
  • アニメ
  • ¥250

「愛して」のブレスは、ボーカロイドだと思って油断して聴き始めるとちょっとびっくりします。すごい好きで、今でもたまに聴いたりしている曲です。

2009年に「VOCALOID2」、2011年「VOCALOID3」とバージョンアップ版が発売されます。とくに進歩がめざましかったライブラリはGUMIじゃないかと思います。ソフトな初音ミクの声とまたちがって中音域の安定したライブラリで、力強いロック調の曲でその魅力を発揮します。

会いたい (feat. GUMI)

会いたい (feat. GUMI)

  • Dios/シグナルP
  • ポップ
  • ¥150

夜もすがら君想ふ (feat. GUMI)

夜もすがら君想ふ (feat. GUMI)

  • TOKOTOKO(西沢さんP)
  • アニメ
  • ¥200

ファルセットやしゃくりといった細かな表現が多用された「会いたい」(2010年 投稿)、中音域の歌声が安定した「夜もすがら君想ふ」(2014年 投稿)は、どちらも初めて聴いたときは、めちゃくちゃ驚きました。これまでテクニックで人間の声に近づけていたのが、ゴリゴリ調整しなくても自然に近い声が表現できるようになったように思います。

GUMIの「地球寿命と最後の一日」も個人的には調声がすごいと思っているのと、VOCALOID3ライブラリではIAも話題になったけど、どちらもここでは割愛。こうした進歩から、冒頭で紹介した2016年の最新ライブラリへとつながっていくのだろうと思います。

ところで、ボーカロイドとよく似た技術でUTAUという音声合成ソフトががあります。

初期には人力ボーカロイドとも呼ばれて、音声ファイルを切り貼りすれば自作ボーカロイドができるのでは? という発想がもとだと思うのですが、現在では無料配布され、有志による音声ライブラリも50を超えるといいます。

私の見たところの傾向ではエレクトロニカ調の楽曲が多くて、独特のファン層があるような気がします。そのためかどうか、音声ライブラリも繊細なものがあって侮れない方面ではあります。しかしこれだけ繊細な表現ができるんですね...EGOISTのchellyさんの声に似てる気がします。

これまで製品開発者と楽曲制作者の切磋琢磨を見てきたのですが、これとは別に産総研の開発した「ぼかりす」という技術があります。ユーザーの歌唱をボーカロイドに反映させることができ、よりスムーズな歌い方、しゃくりやこぶしなど複雑な声の表現ができるようになります。(※ぼかりすは2008年発表、ぼかりすβを使用したかごめPさんの楽曲は2012年投稿曲)

ぼかりす」を聴いたときは凄い!と思ったのですが、これは当時あまり受け入れられませんでした。「裏ワザを使うなんて邪道」というような空気があったような気がします。ひとっ飛びに機械の声が「人間らしく」なるのは歓迎されにくかったのかもしれません。

先述のとおり「初音ミク」はソフトなボーカルの楽曲がふえたのですが、クリプトンの同じ製品の「鏡音リン・レン」は逆の道を辿ったように見えます。

CLOSE*2

CLOSE*2

  • かごめP
  • J-Pop
  • ¥250

ロストワンの号哭 feat.鏡音リン

ロストワンの号哭 feat.鏡音リン

  • Neru
  • アニメ
  • ¥250

よりエッジの効いたキンキンの機械音ボイスの曲が投稿され、人気曲となっていきました。はじめは私も聴きやすく優しいボーカルばかり聴いてたのですが、今では「鏡音リン・レン」楽曲にありがちなキンキンした耳の痛い曲に中毒性を感じてしまうありさまです。

それで、掲題の「ボーカロイド不気味の谷をこえるか」問題なんですが、私の思う回答は「超える日はくるだろう、だがそれが支持されるかはどうか別の問題だ」という感じでしょうか。

それではいったい機械音のどこに聴くべき魅力があるのか、という話と2016年の楽曲というところまで行きたかったんですが、この辺で文字数が4000字を超えそうなので(超えてもいいんだけど、動画引用が重くなってきたので…)次回に稿を改めることにします。