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日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

ジュリア・マーガレット・キャメロン展 @ 三菱一号館美術館

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展示会はすっかり終わってしまったけれど、終了間際に行ってきました。今年は写真展が多い印象ですね。世田谷美術館アルバレス・ブラボ展が良かったので、今年は写真展の年やな! とキャメロン展も行こう行こうと思っていたのですよ。

内容はどちらかというと、ビアトリクス・ポターをとりあげたピーターラビット展のほうに近かったかな。横浜美術館のメアリー・カサット展もあわせて、19世紀の女性美術家をたどる展示、という方がくくりがいいかも。

キャメロンがカメラを手に取ったのは48歳のとき。当時の撮影技術はもちろん、現像の技術も今日とは困難さが違うようで、その難儀さをしても次々と写真を撮り続けた彼女は、それこそ写真の中に自分を見つけたのだろうなあと思いました。

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ピンぼけや現像時のよれや傷などお構いなしに作品をしあげ、古典絵画の構図によせた演技性のある彼女の写真に、当時の反発は相当なものだったよう。ピント合わせも感覚の正しさだし、現像の技術もそう。何より写真のちからは、飾らないところにある真実を写すものではないか。

けれど、そういった固定観念をさっそうと越えてしまう彼女の直感的な作品には、女性ならではの自由さを感じさせるし、そこがまた嫉妬をかきたてられるところなのかもしれません。

キャメロンの絵画を意識した作品は、写真を記録媒体から芸術へと高める支えとなったのだそうです。また、彼女のピントが曖昧で柔らかな陰影がつくる風合いは、ソフトフォーカスという表現手法として、後世にも継がれました。

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個人的にはピントとボケの鮮明な写真や、絞りの硬いパンフォーカスの写真が好きなので、ソフトフォーカスの写真の魅力がいまいち分かっていませんでしたが、キャメロン展を見ると、その源流にふれた気がしました。ソフトフォーカスの幻想的な雰囲気は、キャメロンが試みた絵画の世界へ繋がっているのかもしれません。

奔放で気持ちにブレのない印象のキャメロンでしたが、彼女じしん現像技術には悩んでいて、私淑した写真家に相談の手紙を送ったりもしたようです。時間がたつと浮き上がってくるひび割れに頭を悩ませつつも、写真の隅についた指紋は気に留めていない、という一枚には性格が垣間みえるようで、少し笑ってしまった。

そういった写真の傷も、今では本人が仕上げまで向き合った跡として、作品の価値となっているようです。たしかに、彼女の写真は正確さとは少しかけ離れていますが、その心にある像を光と影の中に再現しようとする一途さが感じられ、また彼女にじっとつきあうモデルたちとの関係性なども偲ばれて、そういった点でも絵画にちかい濃密さがあります。

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ひさしぶりの三菱一号館美術館、建物の雰囲気にひたれるのも毎回の楽しみです。ガラス張りの廊下も好きだけど、建物の前の小さな英国風庭園も良いです。この日は蒸し暑かったので、植物をたくさん活けた柱からミストが噴出していて、そんな機能あったのか・・・と驚いた。もともと好きな建物ですが、さらに好きになりました。