毎年、ってわけでもないけど、文化庁メディア芸術祭に、今年もなんとなく立ちよってきました。
展示面積が年々小さくなっている気がするのは、気のせいか、はたまた来場者が増えててそう感じてしまうのか。全部をゆっくり見れたわけではないけど、気に入った作品だけちょこっとメモ。
マイクのハウリングをスピーカーが奏でる。『The sound of empty space』という作品は、「空間を聴く」というコンセプト。説明パネルでは相互依存的な音のありかたと、その面白さを指摘していて、音の発生や増幅のアンコントロールなところとか、なかなか好きな感じ。
ここ2、3年くらい、視覚や生体データなど情報を音にしたり、自己生成する音だったり、音に関する作品が多いなという印象はあるけれど、今回はあえて絞ったのか、展示ではこの作品くらいだったかな。
Googleストリートビューをつないでミュージック・ビデオにしあげたgroup_inou 「EYE」。実際のストリートビューもこのくらいしゅるるって動けばいいのに。あとポイントを複数設定すると、ポイント間をビュー再生してくれるとかしてくれると、ストリートビュー旅行がはかどるなあ。
四つ打ちサウンド、三面のスクリーンで再生されると、なかなかアガる感じでよかったです。でも人物必要だったかな。ファンにとっては嬉しいかな。1コマずつ手作業らしいので、いちばん苦労したところなんだろうな。影があると浮いてる感なくてよかったかなと思うけど、作業すごい大変だよね。
功労賞の飯村 隆彦さんから、「私があなたを見るようにあなたは私を見る」このインスタレーションの意図するところは、実際にカメラの間に立ってみないとなかなか分からない。二人で背中合わせにそれぞれのカメラを向くと、自分側のモニターに相手の顔がうつるという仕組み。
目は合ってないはずなんだけど、合ってるっていう変な感じ。
なにひとつ説明がなかったので、あれこれ試してみるひと多数で、いい雰囲気でした。
毎年ゲーム作品はいくつか展示されていますが、今年のはDark Echoというホラーゲーム。音の反響を光で視覚化。ゲーム内のプレイヤーが暗闇で足音を鳴らすと、光の波が広がって、数秒ほど地形を確認できる。でも、音は敵を呼び寄せてしまうこともあって、ステージごとに工夫が必要になる。
写真は、水たまりをバシャバシャ歩いていると、下から音にひかれて赤い敵が登ってくるところ。
はじめ人のプレイを眺めてただけだったけど、だんだんルールが分かってくるとやってみたくなって、部屋の隅の実機でぽちぽちやりはじめたら、はまってしまった。で、帰りの電車で240円課金して、ここしばらくぽちぽちやってる。1日1ステージ以上やらないように気をつけつつ…(いまlevel34)
反響定位のアイデアからホラーゲーム。こういう要素がミニマムなものにめっぽう弱い。
展示のなかでいちばんいいなと思ったのは、「Solar Pink Pong」、太陽光を鏡で反射させて、色つきの反射光を路面におとす。コンピューターで制御された光の球は、障害物やその影にあたると、逆方向にしゅっと移動する仕組み。
その場に居合わせた人が光の動きに気がついて、なんとなくパス回しが始まったりして。とくに子供たちが大はしゃぎだったので、心がなごむ。光を追っかけたり、パスを回したり、遊び方はいろいろ。通りにあると、そこに見知らぬ人どうしの緩やかなつながりを生むことができるのかも。
都会に小さなスペースでも緑地地帯があると、渡り鳥たちの休憩の場になるのだという話をいつだか聞いたけれど、都市をあまり合理的につくりすぎず、遊びの空間を作ることが大切なのだという。そういうことを思い出して、空間にハプニングという遊びを生む装置として、素敵だなあと思いました。
あと算道もね、おもしろかったです。理解しようと思ったけど理解しきれなかった。「組み合わせ論理を基に構築した計算完備な計算手法」で論理算盤をつかって計算をするというのだけど…「2+3」を解くのに5分ぐらいパチ、パチとやって、「5です」「ご名答」って流れで、一同爆笑でした。
ゲームでだいぶ時間をついやしてしまって、ゆっくり見れなかったアニメ部門。わりと技術的なところにも視点を注いでいて、その中でも「台風のノルダ」はいい感じ。動きが大きくて、手描き感あって。デジタル技術が進んでるだけに手仕事感が見直されてるのかな。映画もそうだし。
あと、コミック部門は少女コミックが多くて、一昨年くらいまではダークファンタジーだったり、けっこう少年コミック中心だったけど、風向きって変わるもんなんだなあと。漫画あまり読まないけど、さいきん話題になる映画・アニメ化原作も少女コミック多い気がする。
と、感想を書いてみると、結局いろいろ楽しかったメディア芸術祭でした。
平成27年度[第19回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品展
2016年2月3日(水)~2月14日(日)
10:00~18:00まで(金曜日は20:00まで/入場は閉館の30分前まで)
国立新美術館
観覧料 無料
平成27年度[第19回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品展|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO