2015年公開の映画まとめ。順位づけするのはどうも苦手なので、ランキングってわけではないけど、気に入った作品とか、大御所感のあるものをなんとなく上にしてます。あと、2015年に見た映画くくりにすると、古い映画もちょろちょろ見たなあってなるので、そういうのは省いてる。
ツイッターでランキングづけしてるのを眺めてると、クリードまだ見てないなとか、キングスマン結局見なかったなとか思って。そういう意味でもランキングつけづらかった。ことし見たものまとめみたいな感じです。感想書いてないものもけっこうあったので。
ストレイト・アウタ・コンプトン
コンプトンはカルフォルニア南部のアメリカでもっとも犯罪率の高い地域。そこから頭角をあらわしたヒップホップグループ、N.W.A.の成功とその後を描く。米国では3週連続1位の大ヒットで、音楽の伝記ものでは、エミネムの「8 Mile」累計興行収入を抜き去って、史上最高額なのだとか。
ヒップホップ詳しくなくても面白いし、詳しい人はもう絶対見るのおすすめ。 こう書くと響かないだろうなあと思いながら書くけど、仁義なき戦いの広島弁での舌合戦みたいなかっこよさと、シティ・オブ・ゴットの壮絶な環境の青春もの的な感じもあってね、個人的にはばっちりはまった作品でした。
マッドマックス 怒りのデス・ロード
最近、ミュージックビデオか映画かよく分からない作品が多いと思うんですけど、マッドマックスもその系統ながら、でもストーリーやキャラクター設定がたんなる簡素化ではなくて、本当に切り詰めたんだろうなっていう濃縮度があって、素晴らしかったです。
そういえばジョージ・ミラー監督が、音楽のような映画を意識したってどこかで言っていたと思うけれど、その通りの出来で、始まってから終わるまで轟音の流れにいるような。今年のナンバーワンってくくりが申し訳ない、10年に一度の傑作というほどの作品でした。
ちなみに休日にしばしば通っている新文芸坐では、マッドマックス1・2を上映してくれて、1もそれなりにマッドだったんですけど、2のあの、いきなり突き抜けた感じ。当時リアルタイムで見た人たちの、一気に血が沸騰するさまを追体験できて、とても感慨深かったです。
スター・ウォーズ/フォースの覚醒
前にSWファンの知人と話していて、ファントム・メナスをあまりに低評価するので、ep4だってけっこうな楽観主義だったじゃんって言ったら「わかってないやつとは話したくない」と言われてしまった。
後日、新作の感想を聞いたら「5億点」ですって。かわいい。ついまたいじわるしたくなって、「ep4の焼き増しって評もありますが」って聞いたところ「それでいいんですよ」と涼しい返事。「新シリーズはらせん構造なんです。繰り返しているようだけど、新しいステージに移っている」とのこと。
来年はハリウッド版ゴジラのギャレス監督でスピンオフ、ついでep8「LOOPER/ルーパー」のライアン・ジョンソン、ep9「ジュラシック・ワールド」コリン・トレボロウと、新鋭監督を投入して息つく暇なくファンを楽しませてくれると語ってくれました。さすがディズニー、すさまじい資本力ですね。
イミテーション・ゲーム
すっかり去年の映画かと思ってたら今年だった。 ナチスの暗号の解読に挑んだ数学者アラン・チューリング。暗号解読という難問を仲間と衝突しながらも解いていくストーリーを主軸に、幼い頃の大切な友人との思い出を交差させて、ふたつの物語はラストのシーンで結びつく。彼の一途さやそれゆえの孤独が鮮やかになる終盤、涙なしに見れない作品でした。
セッション
J・K・シモンズ演じる鬼教官がすさまじい迫力。短い映画だったなあと思ったら、普通に106分とかある。ジャズミュージシャンをめざす学生の映画なのに、ずっと緊迫しっぱなしでした。芸術の高みをめざすために、負の感情をエネルギーの糧にするというあたり、古い韓国映画の傑作「風の丘を越えて」を思い出し、正しさの中におさまりきらない芸の業みたいなものを感じたのでした。
野火
海外の方が受けそうと思ったけど、国際映画祭ではスプラッターすぎると言われたりしたよう。マッドマックスFR同様、物語の背景をそぎ落としてて、シチュエーションだけを描くので迫力があった。芋の取り合いとか、シリアスな中に可笑しみがあるところに、塚本監督の人柄が透けて見えるようでした。
ワイルド・スピード SKY MISSION
事前知識なしでなんとなく見に行ったんですけど、ポカーンでしたよ。ムキムキのスキンヘッドが主要キャラで三人くらい出てくるし。でも見終わった後の全能感すごいの。知らなかったけど、車って空飛ぶんだなって。ラストも少し切なくていい感じに終わる。その後いろいろエピソード知って、締めのシーンのどことなく寂しい感じを理解するなど。ほんと不思議な映画でした。
美術館を手玉にとった男
マーク・ランディスは絵画の贋作を制作しては、せっせと美術館に寄贈した米国一有名な贋作者。すごく面白かったので、感想は別に書こうかな。書かないかもな。ランディスへの取材が始まってから事態に進展があって、作中ではその展開も追うことになります。彼を追うあまり学芸員を解雇されてしまうレイニンガーとの成り行きなど、ドキュメンタリーと思えないスリリングさがありました。
その他
絵画の返還を求める現代と、ウィーンでの家族との日々とその離別という過去の時間軸が交互に描かれ、物語の二重奏が終盤のピークへ向けて高まっていくなど、ストーリーの構成がきれいな映画でした。
http://dvd.paramount.jp/terminator/
キャメロン監督のターミネーターはイエス誕生の物語を本歌取りにしてるんですって。ジョン・コナーはずっと人類の救世主って呼ばれてたし、機械の反乱は審判の日。赤子の命を狙うのはヘロデ王の兵士たちという具合。ジェニシスはどうかっていうと、ターミネーター1を本歌取りしたっていうね。ターミネーター1みずからが古典になったんですね。うまいこと言った。
他の惑星としながら、明らかに描かれているのは私たち自身。ドン・ルマータのシニカルな眼差しが、じょじょに未開の人々の狂気にのまれていく展開も、引き込まれるところ。
しばしば登場人物がカメラ目線なのは、メタフィクションを思わせてるのだろうか。調査団のカメラとも考えられそうで、構造的に謎を残しているのも、もう一回見たいと思わせるポイントだ。けして途中で寝たからではない。そういえば前述の映画好きの知人が、おりにふれて話す、三回も見た難解な映画「惑星ソラリス」の感想を「寝た」以上に語ってくれないのも、どこか秘密主義めいているのである。