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日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

サントリー美術館 「逆境の絵師 久隅守景 親しきものへのまなざし」展

art

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久隅守景筆「瀟湘八景図屏風」江戸時代 17世紀 サントリー美術館

久隅守景の「瀟相八景」「近江八景」などの作品を見ると、この江戸時代前期に活躍した絵師が、文人画の傾向を持っていたのではないか、という思いになりました。

雨後の水気を含んだ空気、夕霞の向こうから響いてくる鐘の音、澄んだ月明かりを投げかける夜天。季節や森羅万象の文学的な味わいを、独自の筆で追求しました。狩野派に学びながら、筆の運びは洒脱でかろやか。また、筆を線で描くのではなく、面的に描き、質感の表現にも工夫が見られます。

農民の暮らしへと目を向け、牧歌的風景を描いた久隅守景。田園風景を理想的に描いた作品では、早い時期のものになるのではないでしょうか。

狩野探幽門下の四天王と称されるほどだった守景は、しかし娘の雪信が、探幽の弟子のひとりと駆け落ちし、さらには息子彦十郎も悪所通いで狩野派を破門、そのうえ門下生と諍いをおこして流刑となってしまいます。そうしたことが重なってか、守景もまた探幽のもとを離れざるを得なくなるのです。

度重なる逆境であっても描き続けた、その先にあったのが農耕図でした。
農耕図は歴とした武士(支配階級)の需要に応える品。農民の勤労を尊び、またその平安のさまを、統治の理想と見ました。古くをたどれば為政者が民を労わる、中国の鑑戒画なのだそうです。

狩野派より出でて、狩野派ならざるジャンルを切り拓かねばならなかった守景の、ようやくたどり着いた境地だったのでしょう。しかしその苦難の末の画境は、日本の絵画に次の時代の夜明けをもたらす一端であったようにも思えました。

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久隅守景筆「納涼図屏風」国宝 江戸時代 17世紀 東京国立博物館

逆境の絵師 久隅守景 親しきものへのまなざし
2015年10月10日(土)~11月29日(日)
サントリー美術館
10時~18時 ※金・土は20時まで開館
休館日:火曜日(11月3日は開館)、11月4日
入館料:一般1,300円

http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2015_5/