私がゴーギャンという画家に惹かれるのは、そのキャラクターゆえだろうと思うのです。
自意識が強く、豪胆な男。私の好きなホイッスラーも、横浜美術館の企画展では自我の強さを指摘されていたけれど、何と言ってもゴーギャンは尊大なうえに、生前その絵はほとんど売れませんでした。
ホイッスラーの冷笑的な自尊心。クールベの世界を変えようとした挑戦的な自尊心。ゴーギャンの自尊心は、もっと無邪気で、人への好奇心とともにあるように思えます。
汐留ミュージアム「ゴーギャンとポン=タヴァンの画家たち」展のゴーギャンの作品、「2人のブルターニュ女性のいる風景」を見ると、二又に分かれた道と、その間の斜面、それらの面の方向に逆らう動きの動物たち、あるいは女性の視線など、緊張感のある構図にセザンヌの風景画が思い出されます。
画家を志す前からセザンヌの絵を称賛していたゴーギャン。けれどセザンヌには、自分のアイデアを盗もうとしていると警戒されてしまいます。ゴッホとはともにアルルの明るい色彩に挑戦し、芸術談義を戦わせ、ポン=タヴァンではエミール・ベルナールとの交流の中から、総合主義を作り上げました。
セザンヌの「小さな感覚」、画面の中の線と面、対象から響いてくる、その力学。ゴッホの輝く黄色、色彩の巧みな仕掛け。ベルナールの宗教性をはらむ図様化。人との交わりを厭わず飛び込んでいく中に、ゴーギャンは、これから拓いてゆく新しい絵画のヒントを見出してきたのでした。
芸術家として彼は、天才を理解しうる悲しきアマディウスであった。或いはそんな一面も彼のものであったかもしれない、などと思ったりした、ゴーギャン展でした。
パナソニック汐留美術館 Panasonic Shiodome Museum of Art | Panasonic
2015年10月29日(木)~12月20日(日)
10:00〜18:00まで(入館は17:30まで)
入館料 一般:1,000円(一般)
http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/15/151029/