日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

オープン・ウィーク 駅の美術館で楽しむ十日間 座・東京駅@東京ステーションギャラリー

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汐留ミュージアムへいく寄り道に、東京ステーションギャラリーへ行ってきました。

10日間限定の東京駅をたのしむプログラム。期間中はイベントもいろいろやっているようです。ふらっと行ったので、本当に立ち寄っただけではありましたが、演劇の公演があったり、二階のフロアが写真撮影できたり。ちゃんと調べて、プログラムも参加すればよかったな。

演劇「命を弄ぶ男ふたり」は、東京駅創建とおなじ時代に書かれた岸田國士の戯曲。演劇見るの久しぶりでした。線路に飛び込むか飛び込むまいか迷う男ふたりが、駅のホームで出会って、そのうち喧嘩したりして。東京"ステーション"ギャラリーなのにきわどいテーマ。勝負するなあ。

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二階フロアではワークショップの催しがいくつか。丸の内ジオラマの展示とか。およそ100年前の東京駅周辺は三菱ヶ原と呼ばれ、駅舎以外はほとんど何もない風景です。1963年まで美観地区として高さ規制があったそうで、景観に整いのある当時のジオラマもありました。

フロアをふらふらしていたためか、係りの方が催しものの説明をしてくださいました。それがとても面白かったのだけど、もともとこのイベントは、五感で東京駅を感じるというコンセプトがあるよう。

丸の内駅舎の立体カードをつくることで、東京駅のかたちを体験するペーパークラフト。東京駅の音を採取するツアーは、音楽家を講師に迎えて、ふだん聞き流している音へ意識を向ける企画です。視覚障害者と晴眼者で東京駅を歩く"空間観察ツアー"も気になりましたが、こちらは定員いっぱいとのこと。

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東京駅をあとにしつつ余韻があって、少し前に見た「イマジン」という映画の予告を思い出しました。
主人公は反響定位を教える盲目のインストラクター。彼を訪ねたおなじ境遇の女性は、音で距離感をつかむその技術を覚えていきます。そのうちに音がかたちづくる世界がひらけてゆく。音ひとつの語るものの豊かさを知る。

超会議2015ニコニコ学会で登壇された、視覚障害者で文化人類学者の広瀬浩二郎さんの発表では、琵琶法師の演奏を流していましたが、今思えばそれは反響定位の音楽だったのかも。琵琶の音の強弱、声の抑揚がつくる音の遠近感。広瀬さんも視覚以外の感覚、聴く・触る世界の豊かさに関心を寄せているようでした。

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日々の生活で生きやすいように、知らずとミュートしている感覚がある。そうやって意識から消された音に耳を澄ませてみる。視覚に頼りきりでは気づけないもの。空間をつくりあげる音。あるいは触ることで体得する、主観的な造形。そういうことを、その感覚に敏い人とのふれあいで気づいていく。

音のランドスケープみたいな空間作りもあってもよさそう。たまに渋谷に行くと音の洪水に圧倒される。歓楽街の看板みたいに、競って主張する音。音を主軸にデザインされた空間を、実際の都市空間につくりあげるのは難しそうだけど、アートの一環で擬似的につくることなら、まだ現実的だろうか。

https://itunes.apple.com/jp/album/asleep-on-a-train/id567655072?i=567655084&uo=4&at=10l8JW&ct=hatenablog

鉄道と音といえば、無機質な音楽をBGMに車窓の風景を眺めるのは、癖になる楽しさがあると思う。
鉄道には音楽的な魅力もたぶんある。ドヴォルザーク蒸気機関車が好きで、汽車を眺めるのは日課、最寄駅の時刻表を暗記するなど、鉄道マニアの元祖みたいな人ですが、ユモレスクは汽車に揺られているときに思いついたのだとか。

と、いろいろなことを考えて、思わぬ深みのある東京ステーションギャラリーでしたが、いちばんの目的だった汐留ミュージアムゴーギャン展は、前日からの体調不良がいよいよピークとなって、何を見たかあんまり覚えていない…楽しみにしてたのに。悲しい。

オープン・ウィーク 駅の美術館で楽しむ十日間 座・東京駅!Play the Tokyo Station
2015年11月14日(土)〜11月23日(月・祝)
10:00 ~18:00
※金曜日は20:00まで開館
※入館は閉館30分前まで

http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

関連URL

反響定位


盲人芸能の精神 | 国立民族学博物館
琵琶の音の響き、鍛え抜かれた声の迫力に圧倒された体験が、僕の研究の原点にある。杖を頼りに各地を旅した琵琶法師は、音と声で自己を表現する独自の芸能を生み育てた。平家物語は「音で世界をとらえる」盲人芸能の代表だろう。
http://www.minpaku.ac.jp/museum/showcase/media/tabiiroiro/chikyujin207