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日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

李禹煥「色のハレーション / 空間のハレーション」@ SCAI THE BATHHOUSE

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日暮里駅から谷中霊園をぬけて、すこし歩いたところにあるアートギャラリーです。趣きある建物を眺めてると、通りがかった土木職人のひとりが、おおっとつぶやいて立ち止まり、連れの人が「風呂屋を改築したんだよ」って教えてて、へえーと三人でしばらく瓦の立派な屋根を見上げたのでした。

破風の中央にさがる水流を模した装飾板は、懸魚(げぎょ)といって、火除けのまじないでかけられるのだそうです。なるほど風呂屋の名残を、しかと残している。

そのSCAI THE BATHHOUSEで12/5まで開催されている、李禹煥さんの個展。シンプルなかたち展、東京オペラシティの水彩画コレクション展、東京国立近代美術館の「もの派」小企画展と、年内だけでも作品にお目かけする機会があったものの、李禹煥さんひとりをじっくり見るのは、今回がはじめてです。

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「プロローグ」:原美術館、直島の李禹煥美術館の「対話」と同種の作品ですが、今回はプロローグと題されていました。

引き戸の玄関口をくぐって、その向こうに二間の展示スペース。まず迎えるのはプロローグという作品です。青の四角に向かい合う赤の四角。色彩と形状の、それとない呼応。自然光のやわらかな明るさに満ちるその空間は、メインの作品までのアプローチでもあります。

奥の間には、画面いっぱいに蛍光色が塗られた作品が三枚。その空間に踏み入る前に、思わず立ち止まってしまう。壁は真っ白で、三枚の絵はまばゆい暖色。一瞬、目がちかちかする。蛍光色から目をそらしても、色彩の存在感は肌に伝わってきます。しばし佇んだあと、おずおずと色彩の空間に進みいる。

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「風景」:1968年の発表後に紛失して幻の絵画となっていたシリーズを、再制作した作品。

李禹煥さんの作品を読み解く私なりのキーワードは「関係性」です。最低限まで切り詰めた対象に、伝えるものを集約させていく。そのモノどうし、あるいは鑑賞者とモノの関係性。今回の作品は、その呼応はありつつも、存在は一点に凝集するのではなく、空間に伝搬して広がっていくようです。

青みの少しずつ異なる三つの絵は、向かい合わせになって響きあっています。その波のぶつかり合いの中に、予測できないものが生まれるような。強いまばゆさの衝突する地点に現れる、コントロール不可の事象。そういえば、この展示会は「色のハレーション / 空間のハレーション」というのでした。

空間の真ん中に立つと、谷中の閑静な住宅街にいて、あたりがとても静かなことに気がつきます。
共鳴する三つの絵のはざまで、耳には聴こえない色彩の音を聴く。低く暖かなノイズが頭上に響くようで、思わず空間を仰ぎ見る。そこは色彩のぶつかり合いの、もっとも激しい場所。

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予定のある人は、もうぜひ午後の早い静かな時間帯で、その無音の音を聴いてほしいなと。私の行った週末の午後は、人の姿もちらほら。カーキ色のコートは蛍光色カラーのある風景を引き締めるなあと眺めたりして。鑑賞者と絵画の色彩の取り合わせもまた楽しめる、不思議な展示でした。

帰りは小雨の降りそうな曇りで、早々に退却…と思ったはずが、途中のお寺で、アイドルかってほどの人気の猫がいたので、ごついレンズのおじさんと海外のカメラ青年に混じって、猫撮影。いい顔が撮れました。晴れてたらもっと谷中うろうろしたのにな。

李禹煥「色のハレーション / 空間のハレーション」
SCAI THE BATHHOUSE
2015年11月5日(木)- 12月5日(土)
12:00-18:00 *日・月・祝日休廊

http://www.scaithebathhouse.com/ja/exhibitions/2015/10/lee_ufan_color_halation_space_halation/

色のハレーション/空間のハレーション | Miki Nakatani - 中谷美紀オフィシャルサイト

かねてからの李禹煥さんのファンである中谷さんも行ったのだそうで。それだけで足を運びたくなりますな。

瓦の名称の確認で検索してて出会ったのですが、瓦ロマンにあふれたコラムで、しばらく読み込んでしまった!