日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

映画の感想 - ヴェルサイユの宮廷庭師

予告がすてきな感じだったんですよ。夏ごろから封切りされたら観に行こうと思っていた作品でした。
上映始まってすぐ見に行ったのですが、記事下書きしたあと、しばらく寝かせる癖があって…いい加減上映も終わってしまいそうなので、のろのろ更新です。

17世紀フランス国王の庭園建築家アンドレ・ル・ノートルは、無名の女性庭師サビーヌ・ド・バラの独創性に惹かれ、彼女をヴェルサイユの庭園建設事業に採用する。それなりの世渡りでうまく生きてきた賢明なル・ノートルだったが、サビーヌとの出会いで、造園に対する情熱を目覚めさせられていくのだった。しかし同時にそれは、許されざる恋のはじまりでもあった——

というのが、予告編を見たときの印象でした。

実際は、それも話の一部ではあるけど、全部ではなかったかな。

先に書いておくと、史実とは違う部分がかなりあって、アンドレ・ル・ノートルは親や妻に頼らずとも功績ある造園家であり*1、サビーヌ・ド・バラという女性も架空の人物だそうです。なのでフィクションとして楽しむべき物語ではあります。

作品を見ていて、この物語は、生き直しの物語ではないかと思いました。
サビーヌを演じるケイト・ウィンスレットは今年40歳、作品内でも死別した夫の存在がそれとなく描かれます。アンドレにも妻がいて、ふたりとも人生のひとつのサイクルを済ませています。しかし半ばまで歩んだ道を振り返ると、生きることのできなかった、もうひとつの自分の姿が浮かび上がる。

自らの情熱で生きることへの渇望に気づかされるアンドレ。サビーヌも失った愛の幻影にとらわれて、愛し愛されることを恐れている。そのふたりは造園事業をとおして互いのなかに「生き直し」の希望を見つけてしまう。しかし人生半ばまで生きたふたりには、それぞれに背負うものがあった。

さて、この作品の原題は、a little chaos で、ル・ノートルの秩序ある庭園に対する、サビーヌの混沌を大切にする価値観のことを指しています。しかし、ありのままの自然を庭園に取り入れることは、英国式庭園の特徴でなかったか。そう考えると、製作がBBCであることになんとなく合点がいったり。

ヴェルサイユ宮殿の庭の中でも「舞踏の間」の広場は、機能美に整えられた庭園の中で一風かわって、野趣あふれる空間なのだそう。そこに立って、秩序を好むル・ノートルに、この空間を作らせた動機はいったい何だったのだろうかと思い馳せる。この作品の着想は、そんなところにあるようです。

冒頭のシーンでサビーヌが花鉢を移動させるシーンに象徴される、景観における予定不調和は、彼らの人生に間もなく差し込んでくるものでもあります。その混沌は、しかし抗いがたく運命的である。予定不調和なものの魅力を庭園と人生に重ねて描く。調和の中の乱れ、それこそが私たちに感情を引き起こすものであるのです。

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河口湖オルゴールの森美術館 ローズガーデンにて/グラミスキャッスル イングリッシュローズ(たぶん)

ただ、個人的な好みをいうなら、ベースには繊細な物語がある一方で、話の後半はライトな展開だったかな。気になって調べると、脚本を書いたアリソン・ディーガンは今回初めての執筆で、そのためベテラン脚本家が共同執筆についたらしい。その辺も、作風の違和感の要因なのかも。

まあ、でもたまにはこういう真正面からの恋愛映画もいいかな。エンドロールがはじまったとたん、顔をおおってしまったほどの、ど直球なラブストーリーでしたよ。朝夕めっきり冷え込んで、街もそろそろ秋の装いですし、恋愛もののひとつでも見たいって人にはおすすめです。