日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

箱根で琳派 大公開 ~岡田美術館のRIMPAすべて見せます~|岡田美術館

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福井江太郎「風・刻」

岡田美術館の秋の展示は琳派展。内覧会のお知らせを知って、箱根まで少し遠いなあとすこし悩んだのですが、日ましに気になるので、えいやと参加してきました。

ぐずぐずした天気が続いたこの頃でしたが、この日は雨のあいまの薄曇りで、箱根の山も夕方にはすこし肌寒く感じる9月の初旬です。夏終わったんかな。

副館長の寺元さんのお話に、作品の見方や、買い付けのときの苦労や喜びから、思い入れの深い作品のエピソードを聞けて、美術ロマンをひしひしと感じてしまう内覧会でした。
とくに注目の作品数点をおいつつ感想としたいと思います。

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尾形光琳「菊図屏風」(18世紀)岡田美術館蔵 *館内・展示品の写真は許可を得て撮影しています。

箱根にゆったり土地をとった岡田美術館は、想像よりも広くて展示数も豊富です。
二階のフロアはとにかく広い陶磁器の常設スペース。扉をあけると心地よい薄暗がり、その向こうの照明に浮かぶ金屏風という、作品までのアプローチ。この演出で、琳派の世界にぐっとひきこまれます。

日本橋三越では催事スペースにぎゅうとつめこんで展示されていたひとつ、尾形光琳「菊図屏風」。
根津美術館の「燕子花図屏風」に似た、花々が奏でるリズミカルな世界ですが、丈はより高いでしょうか。金地に白のとりあわせには華やかさがあります。

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琳派は京都でおこって、のち江戸で再評価されますが、本阿弥光悦俵屋宗達、そして彼らからはひ孫ほどの歳*1尾形光琳をおもに「京琳派」、100年ほどへて、かつて光琳が江戸にきたおり仕えていた酒井家の子孫、酒井抱一光琳なる京絵師を知って、以降の江戸での流れが「江戸琳派」となります。

その琳派における「京と江戸」のちがいを、図録では「和歌と俳諧」と表現していて、なるほどと膝をうちました。光悦の書にのせて描かれる宗達の画筆は、和歌のリズムにもとづいておおらかです。
一方、酒井抱一のころになると、より洗練されて、季節の味わいがにじみ、詩情がある。

今回は京琳派を主軸にしています。光悦、宗達や、宗達のブランドであった伊年印の作品、それに光琳、乾山と続きます。こうくると後期は江戸琳派だろうなと思って、こちらも気になります。

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尾形乾山「色絵竜田川文透彫反鉢」(18世紀)岡田美術館蔵

尾形乾山の作品も、向かい合わせのケースを展示空間にして、フロアの端から端までたっぷり展示。兄、光琳との合作、仁清からの流れを感じさせる作品と、ここだけでじゅうぶん一回分の満足がある。

さらに展示エリアをぬけた一室には「色絵竜田川文透彫反鉢」の姿が。サントリー美術館で最近まで開催していた乾山展出品のものと同じ意匠のもの。流水さえも造形にしてしまう発想に、息をのむおどろきがありましたが、このシリーズは三つ知られ、岡田美術館のものは最初につくられたものとのこと。

寺元副館長の「緊張感が感じられる」という話もうなづけます。比べて大胆さはありませんが、透かし彫りはより丁寧。秋の席につかえば、床におちる器の影を木漏れ日に見立てて、風情を感じられそう。

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尾形光琳「雪松群禽図屏風」(18世紀)岡田美術館蔵

尾形光琳の「雪松群禽図屏風」は、金地に強い装飾性の構図に、ふむふむ琳派だなあと思うのですが、近づくと松の幹や水鳥の丁寧な描き込みに気づく。品格を感じさせて、見入ってしまう一品です。

この絵を見た岡田館長は、具合でも悪いのかというほど黙り込んでしまい、それから美術館をつくりたいとの希望を打ち明けたそう。すぐに返事ができず、少しずつ作品を集めることから始めましょうと答えた寺元副館長。ついには開館して二周年となる今秋からすると、はじまりの一枚でもあるのでした。

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琳派展のほかに、3階フロアでは所蔵品の展示。今年初めの日本橋三越の岡田美術館展で、すっかりコレクションのとりこになってしまったのですが、その理由のひとつは、琳派と一口にとらえずに、その様式が、やまと絵の流れにあることを教えてくれたところかと思います。

そんなわけでコレクションの展示は、やまと絵の展示からはじまり、安土桃山時代の山水画、呉春、円山応挙など江戸中期の絵師、狩野芳崖、橋本雅邦ら明治の日本画まで幅広い時代をさらりと展示。また春画の展示もあります。作品は葛飾北斎、渓斎英泉。

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「ボンボンショコラセレクション」「失恋チョコレートバー」/岡田美術館「光琳菊図屏風チョコレート」試食用断面図

秋の琳派展にあわせて、岡田美術館ミュージアムショップでは尾形光琳「菊図屏風」をモチーフにしたチョコレートを販売中。ちょっと試食をいただきました。ひとつづつ味がちがうのだけど、「柚子とマスカルポーネ」がおいしかった。柚子の香りってけっこう強いんだなあと改めて思った。

今回夕方で行けなかったけれど、庭園に面したカフェもあって、和様のしつらえから見るガラス張りの向こうの風景が、またよいのです。カフェの代わりに、足湯が夜までやっていたので、温かいコーヒーをいただきつつ、エントランスを飾る風神雷神図を眺めながら、ひととき足を休めたのでした。

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もう少し詳しく書いたエントリ。

関連URL

サントリー美術館の乾山展で出展されていた「色絵竜田川文透彫反鉢」について。
もと板橋区立美術館館長の安村敏信氏の記事。
豊富な知識と経験ながら、さらっと書いていて好きなブログ。(ブログと呼んでいいのかどうか)

琳派についての長い記事。
いまさら「琳派とは」なんてなあと読み始めて、がっつり読み込んでしまうという。
現代美術との親和性も、琳派に見られる傾向のひとつなのかもと、改めて思いました。

箱根町周辺の火山・地震活動|箱根町

2015.9.14現在で、気象庁箱根山大涌谷周辺)警戒レベルは2となっています。
私が美術館に行った時はレベル3で、ポーラ美術館が出展作品を調整したりしてたので、客足もひいてるのではと少し心配していたのですが、宿とかふつうに混んでた。
ポーラ美術館もせっかくのセザンヌ展、ラリック美術館ではミュシャ・ラリック展を開催中なので、たくさんの人が行きやすくなるといいな。

*1:孫→ひ孫に修正しました。光琳の曽祖父の妻が、光悦の姉だそうで、年齢差も100歳ですし、孫というにはちょっと厳しい年齢差ですね・・・。 参考:琳派①-光琳と呉服商雁金屋 | 京都 寝具メーカー 京都西川