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日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

映画の感想 - 星条旗のある風景

雨の週末、新文芸坐へ行ってきた。日がな映画館にいる感じが楽しい。
8月の最終週は、クリント・イーストウッド監督の二本立て。

先日見たドイツ映画の感想の後にちょろっと書こうかなと思ってたけど、長くなったので分割。最近映画の感想ばかり書いてるけど、感想スルーしてる作品もいっぱいある。毎度書いてしまうことだけど、映画レビューはなんだか苦手。でも話題じゃない映画なら別にいいかな。

アメリカン・スナイパー(2015)

9.11をきっかけにおこったアルカイダとの戦いに、現地任務を負った特殊部隊ネイビー・シールズで、「伝説(レジェンド)」と呼ばれた米国人スナイパーを描く。と、大枠から記したのは、私がこの映画に、イラク戦争を描いたものらしいという、ぼんやりした認識しかもっていなかったから。

シールズが追っていたのは、当時アルカイダの重要人物と考えられていたザルカウィ。作品にはその側近である二人の男が出てくる。虐殺者と呼ばれる男と、元シリアの射撃オリンピック選手ムスタファ。

すこし調べると、二人とも実在するが、ムスタファとのエピソードはフィクションらしい。そう考えると、かえってムスタファの存在が、物語に必要なものだったことに気付かされる。主人公の引き際のきっかけとして、あるいは、向こう側の世界を背負うもうひとりの彼自身の存在として。

最近撮りためてたドキュメンタリーを見てたのだけど、その中の「マルタ島のエース」という番組が、この作品に重なった。ヨーロッパと北アフリカの間にあって、枢軸国との激しい戦闘が繰り広げられたマルタ島。イギリス空軍ジョージ・バーリングは、敵機23機を撃墜し、エース・パイロットとなる。

彼も伝説の多い人物で、また、戦争が終わってからの日常にうまく戻れなかった。戦闘の世界に適応してしまう。一種の中毒状態になる。けれどその一方で、バーリングにも傷ついたマルタ島の少女に向ける憐れみの眼差しがある。カイルがイラクの子供にロケット砲を捨てるよう願うシーンがあるように。

この映画は反戦か賛美かと話題になったけれど、両方の際すれすれを描いているように思う。ラストの通り沿いを埋める人々と星条旗のシーンは、ある種の高揚感を覚えさせる。暮れの空にたなびく星条旗は美しい。その絵に心惹かれるのはなぜだろうと思う。

ヨーロッパなどの国と比べて、アメリカの歴史は浅い。そのアメリカが国としての求心力を保つには、戦争し続けるしかないだろうか。民族で自然と結びつける古い国々とちがい、自由と平等の理念のもとに、戦いが彼らを結びつける。いつの時代も国を国としてきたのは、戦争の力だったのかもしれない。

グラン・トリノ(2008)

二本立ての二作目はグラン・トリノ。シビアな気持ちになった後に、ヒューマンドラマのよい流れ。つねづね戦場の真実を描こうとするイーストウッド監督だけど、グラン・トリノは彼のファンタジーなんじゃないかなと思った。

なので、全体的にスイートな印象。これまでが渋すぎるのかもしれないけど。監督自身、朝鮮戦争の経験があって、彼が演じる堅物の退役軍人は、本人のあれこれとかなり重ねているんじゃないだろうか。

甘めの代わりに、展開をスムーズにしてるのが小気味好い会話のユーモア。映画を通して笑うシーンがコンスタントにある。コワルスキーじいさんはいつもバリバリのレイシスト発言なんだけど、友人たちも負けずに言い返すので、なんだか均衡保っている。

かつては戦場の英雄も、今は時代遅れの頑固な老人で、息子夫婦との間にも溝ができている。時代に取り残された老人が、隣に越してきたモン族の姉弟と出会い、徐々に交流を育むなかで、孫ほどの少年に継ぐ何かを託したいと思うようになる。

これもう、ちょっとした老人のロマンだと思う。けれどそれを、アジア系やアフリカ系の人々の移住が増えてくる町を舞台に描いていて、そういうところがイーストウッド監督のバランス感覚なのかな。

作品にはシビアなメッセージもある。戦争に必ずある側面、報復が呼び込むものは報復でしかないということ。始まってしまった報復劇にどう決着をつけるのか。町の抗争を戦争に見立ててるとして、ラストの選択は国家にはとれないという点で、夢想的であり、ひるがえって辛辣でもある。


関連URL

空の英雄たち | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
愛する祖国を守るため、命を賭けて大空を駆け抜けた空の英雄たち。高度6000メートルを超す上空で引火した翼の炎を見事に消しとめた空軍将校や、ベトナム上空で4機のミグ戦闘機を撃墜したF-4Cファントム戦闘機のパイロットなど、壮絶な伝説の数々は今も人々の胸を打つ。6回シリーズ。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20130724/359175/

ナショナルジオグラフィックの番組だった。面白かったから、あとでメモがてらまとめようかな。