おもしろかった。
今年で確か4回目開催の超会議。
去年は帰省とかぶって行けなかったけど、今年は初日だけ行ってきた。
以前と比べて話題になってない気がしたので、ちょっとトーンダウンしてるかなって思いながら行ったら、なんのそので、フロア数も増えてむしろ規模拡大してた。
お目当てはこれ。
ニコニコ学会βシンポジウム!!!
文系の私がファンと言うとにわかっぽくて恥ずかしいので、言わないけど、でも毎回楽しみにしてる。
研究100連発は、それぞれの研究機関の登壇者が20分ほどで、第一線の研究を発表。
東海村J-PARCの設計者多田博士は、まるで宮藤官九郎のドラマに出てきそうな見目姿で、素粒子物理学のロマンを語ってくれました。ほかにも抵抗ゼロの超伝導でエネルギー問題を解決する話とか、初期宇宙をかいま見る電波望遠鏡アルマの話とか、データマイニングとかいろいろ。
登壇者さいごは国立民族学博物館准教授の方で、人文系の発表。琵琶法師やイタコから”触る文化”へと研究が転じていくのは、ご自身も十代の時に失明をしていることが深く関わっていて、それは歴史の中にアイデンティティーを探す試みから、やがて可能性へと視線が向いていくようでもあります。
途中、琵琶法師の演奏が流れたのだけど、感覚を澄ませて聞くと、声の抑揚がそのまま空間の演出のように感じられる。サラウンドシステムで臨場感のある音とか言うけれど、視覚に頼れない人からすると、音で空間を把握するのはきっと自然なことで、デジタル音響なんてない平安時代に、琵琶法師たちは声の抑揚で、音場を表現していたのかもしれない。なんて思いました。
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ついでは研究してみたマッドネス。
このころには立ち見客でブースにおさまりきらないくらいで、マッドネス人気なんだなあと。
ずっとマッドな研究を紹介する企画だと思っていたけど、マッドネス自体がライントニングトークに近い、ショートプレゼンのことらしく、しかしその響きのイメージを損なわない、持ち時間3分!で型におさまらない研究が矢継ぎ早に紹介されるのでした。
休憩がてらロボットエリアを見に行ったりしているうちに、すっかり遅れてしまい、「NHKだけ映らないアンテナ」は見れずじまいでしたが、「偶然短歌bot」から「Animal Catcher」まで楽しく拝聴しました。偶然短歌botのターンはじわじわ盛り上がって、笑ったり拍手があがったり。個人的には「軌道エレベータの多時間構造」が好きなテーマでしたが、これ3分でやるって無茶じゃない 笑。淡々と解説してるだけなのに、どんどん混乱におとしいれられる。
実は翌日も、仕事しながら生放送で聞いていたのだけど、おもしろかった。超リアルARや、超巨大AR、プロジェクトマッピングで自分の部屋をゲームサーキットにするなど、エンタメ性高かった。
あと!異性装のセッションもおもしろかった。トランスジェンダーとはちょっと違う。元の性にはいつでも戻ってこれる、どちらかというと性の境界を超える自由さ。民俗学的見地から見た異性装、両方の性をもつことは神に近づくことで、多神教と一神教の違いなど、興味深い話がちらほらと出てきた。
プレゼンを一通り聞いたあとで、気になった書籍を買って帰るのが楽しみだったんですが、ちょっと少なめの商品数なのが残念でした。アマゾンで買い足そうかな。
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ニコニコ学会βは、5年の期間限定プロジェクトということで、来年も開催される超会議にはあるのかどうか。でも後継のニコニコ学術研究部みたいのはあってほしいな。離れのエリアにもかかわらず盛況だったので。12月のニコファーレも専門外の私には心の敷居高いけど、行きたいなあ。
次はこれまでの研究発表者たちが、いま何をしているかを紹介してもいいんじゃないって話が、最後に出てた。そう言えるのは、そこからそれぞれに研究が発展しているからだろうなと。
閉場間際まで企業ブースをうろうろしてたのだけど、NTTでは「ギガ速い」のパワードスーツに実際に乗って操作してみる企画をやっていました。一回目超会議のニコニコ学会で発表された人力パワードスーツですよ。子供に大人気!と思ってよく見ると、ならんでるのおっさんばっかりだったりしてね。
残念なところもいくつかあって、ニコニコ学会のブースを探して迷子になっている間に、言論エリアで開催されていた、氷川竜介×庵野秀明×川上量生トークセッションが見れずじまいだったことはそのひとつでした。前は学会と言論すぐそばだったので、ちょろちょろ行き来できたのですよ 涙。
17時をすぎるとすっかり祭りの後ムードで、ついでの目的だったボーカロイドエリアは楽しめずでした。ボカロDJステージとか、プラネタリウムとか。見たかったな。
「ニコニコ動画を地上に(だいたい)再現する」のがコンセプトの超会議。初日は会場で、二日目はネットで参加しましたが、その狭間にいる感じとか楽しかった。目の前に見えてる世界に、コメントが同時進行で流れ続けていて、ネットとリアルの交差する空間というか。
そこにはやっぱり可能性みたいなのを見てしまうし、逆にネットに先鋭化してしまうことで行きついてしまう袋小路もきっとある。そういうことを感じたので、買って帰ってきた本「ユーザーがつくる知のかたち」はちょうどいいテーマだったかも。
情報ってランキング上位から仕入れていくのがきっと効率的なんだけど、超会議みたいな場は、すごくノイジーな中から、自分の中の”つながり”で主観的に出会っていく感じ。むかしレコード店の視聴コーナーかたっぱしに聴いていたのに似ている。こういう雰囲気は好きだなあとしみじみ思いました。
終わりに近づくとあちこちから tell your world が流れてきた。たのしかったーって言い合いながら帰る中学生たちとか。コメントで、日本人でよかったっていうのが散見された。
私の場合はちょっと違うけど、あまり恵まれてない世代に育ったなあと思ってる中で、ボーカロイドとかニコニコ超会議の、離れていてもつながっていて、それが可能性をはらんでいる感じって、たぶん今の時代だけだろうなと思う。だから、この時代に生まれてよかった。かなあ。
*メモ。関連URLあとで追加する。
関連URL
*超会議公式ページ、当日登壇者一覧やタイムシフト視聴はこちらから。
*ニコニコ学会βのこれまでとこれから
http://legacy.kek.jp/ja/activity/past/K2K.html
*J-PARC加速器を用いたつくば−神岡間長基線ニュートリノ振動実験について
*どちらかというと、「鉄系超電導物質」発見の経緯までを面白く説明されてた高野博士。研究についての日経サイエンスの有料記事
http://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/doyou/CK2014101102000224.html
*国立民族学博物館「さわる文化」の常設化の試みなどをされている広瀬先生について、東京新聞の記事。
アルメニア、アゼルバイジャン、ウクライナ、中央アジア、およびシベリア #tanka
— 偶然短歌bot (@g57577) 2015年1月12日
ウィキペディア日本語版「モロカン派」より http://t.co/SHfOLLIWud
*ほのぼの。
*プレゼン前の動画5分ある。誰かインターステラーみたいって言ってたけど、軌道エレベーターを舞台にしたインターステラー的ソリッドシチュエーションムービー作れそう。
*二日目はこの発表がいちばん面白かった。実際には企業イベントで使われそうだなあって思った。スポンサーすぐつきそう。
1274夜 『女装と日本人』 三橋順子 − 松岡正剛の千夜千冊
*ジェンダー&セクシュアリティ史の研究者、三橋先生について。歴史・民俗学の見地からみていて、すごい面白い。