読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

花と鳥の万華鏡 ―春草・御舟の花、栖鳳・松篁の鳥― | 山種美術館

f:id:mventura:20150219010527p:plain

※作品および館内は、内覧会につき許可を得て撮影しています。

ちらほらと雪が降ったりして寒い日が続きますが、山種美術館では、待ち遠しい春をひとあし早く味わう花鳥画展が開催されています。

山種美術館のブロガー内覧会のイベントに、今回も参加してきました。
美術展の感想は長くなりそうだったので、まずは紹介がてらの短い記事です。

来館者を迎えるのは、速水御舟の「牡丹花(墨牡丹)」。御舟の晩年の作。
展示会を通して感じるのは、速水御舟という画家が、自然のものの質感に大変にこだわった人であるということ。さまざまな技法に取り組んだ御舟が晩年に描いたのは、墨一色の牡丹の花でした。

f:id:mventura:20150223010107p:plain

速水 御舟「牡丹花(墨牡丹) 」1934(昭和 9)年

実際には存在しない黒い牡丹に、御舟が描こうとしたものへ思いを馳せます。

げに絵画こそは、観念からいづるものにあらずして、認識の深奥から情熱が燃え上がって、はじめて造り得らるる永遠に美しき生命の花であろう。
「塔影」9巻8号 1933.10(展示会説明書きより一部抜粋)

f:id:mventura:20150223012349j:plain

鈴木 其一「四季花鳥図」(部分) 19 世紀(江戸時代)

江戸絵画からは琳派の絵師、鈴木其一の「四季花鳥図」が展示。野の草の賑わいに紛れて身をひそめる鶏の親子と、鴛鴦(おしどり)の夫婦が愛らしく描かれます。四季の草花に、親子と夫婦の睦まじい姿。めでたい雰囲気の一枚です。

f:id:mventura:20150223013818p:plain

岸 連山 「花鳥図」 19 世紀(江戸時代)

「五客図」は北宋の李昉が五羽の鳥を客に例えて呼んだことから命名されたそうで、絵の中に五種類の鳥が描かれます。今回の展示でも複数展示されている題材です。

幕末の絵師岸連山の描く五客図は、松竹梅に牡丹や薔薇と、華のある題材を穏やかな画面に描いていますが、木々の枝は凛と伸びて、師譲りの気迫ある筆が見られます。

f:id:mventura:20150215173119j:plain

荒木 十畝 「 四季花鳥」 1917(大正 6)年

荒木十畝「四季花鳥」は、山種美術館の所蔵品でもっとも縦幅のある作品。館内の展示ケースは、この絵に合わせて作られているそうです。

鳥の尾と花の色を合わせたり、色彩の濃淡で遠近感を表したりと工夫が見られます。大きな画面を存分につかい季節ごとの花々を描いていて、作品の前に立つと、四季の色彩が響いてくるようです。

f:id:mventura:20150215193304j:plain

(中央の掛け軸二枚)左)横山 大観 「春朝」 1939年頃/右)菱田 春草「月四題のうち 『春』 」1909-10年頃

花と鳥の競演を楽しんだあとは、花や鳥を単体で描く作品へ。

菱田春草の描く儚げな桜と、太陽を背にしてすくっと立つ横山大観の力強い桜が隣り合わせに並びます。同時代を生きた画家の、静と動の表情が垣間見えます。

f:id:mventura:20150215183549j:plain

田能村 直入 「百花」(一部) 1869(明治 2)年

田能村直入「百花」は、その名の通り百種類の花を描いた巻き本。季節の花々が入り乱れるようで、華やかな作品です。

花を主題にした作品では、このほか、上村松篁の描く気品ある一枚「花菖蒲」や、西洋画を学んだ川端龍子の濃厚な色彩の「牡丹」などが良かったです。

f:id:mventura:20150223020747j:plain

左)今尾 景年「朧月杜鵑図」 19-20世紀(明治-大正時代)/右)竹内 栖鳳「双鶴」1912-42(大正元-昭和17)年頃

締めくくりは動物画。花鳥画では凛と涼やかな鳥たちが多かったのですが、単体で描かれた作品には、どこか愛らしい姿が多く見られます。

動物画を得意とした竹内栖鳳の作品は5点、そのうち「双鶴」は、さらりとした筆のわりには、目元や脚元などリアルに描いています。軽やかながら対象をとらえる筆の確かさを感じさせます。

* * *

山種美術館では併設カフェにて、展示会にあわせた特製和菓子を販売しています。
作品のイメージにあわせて数種類。そのうちの「巣ごもり」という和菓子をいただきました。

f:id:mventura:20150221080841j:plain

左)速水 御舟「百舌巣」1925(大正 14)年/右)展示会に合わせた特製和菓子。御舟の「百舌巣」をイメージ

内覧会では、個人的に応募して参加されたという山種美術館の設計担当者の山下さんが、サプライズで美術館の建築的裏話を話してくださいました。

美術館は日常から非日常への移動なので、その演出を考えるものなんだそうです。山種美術館では、受付のある一階から展示エリアに下る階段にその演出がされているのだとか。

少し照明をおとした空間の壁際に、光の切り込みがはいっています。階段をくだるにつれ、光のラインは目線の高さになり、やがて頭上を越します。この光の結界が、山種美術館における日常と非日常の境目なのだそうです。

山種美術館へ行かれる方は、ぜひちょっと気にしてみてください。

f:id:mventura:20150219232341j:plain

展示会ポスター/ロビーから展示室への階段、壁画は加山又造千羽鶴

    • -

花と鳥の万華鏡 ―春草・御舟の花、栖鳳・松篁の鳥―
2015年2月11日(水・祝)~4月12日(日)
開催中の展覧会 - 山種美術館

    • -

もう少し長い展示会の感想。

花と鳥の万華鏡@山種美術館 part 2 - 日々帳