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日々帳

140字で足りないつぶやき忘備録。

ホキ美術館 - 建物探検セミナー

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ホキ美術館、建築探検セミナーなんてやっていたので行ってきた。

美術館の学芸員の方が案内するのかなくらいに考えてたら、なんと実際に設計担当だった方の解説なのでした。

設計・施工時の裏話など交えながら分かりやすくお話いただいて、私のような建築に詳しくない人でも楽しめるセミナーでしたが、でも建築を勉強中とか携わってるとか、詳しい人だと絶対もっと楽しい。解説ごとに質問の時間をもうけていたので、いろいろ質問もできるのです。

今回はアンコールにお応えしたイベントということで、次回いつあるかは分かりませんが、でも思ったよりたくさんの人が参加してて、人気企画という感じがしました。

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美術館は昭和の森という公園のそばに立っていて、木の香りがただよってくる心地の良い土地。

美術館の外観でよく紹介されている宙にびょーとせりだした回廊は、エントランスの反対側、公園から出てきたひとたちが目にするエリアでもあります。
なので、なんだろこの建物…と思ってもらえるように、大胆なつくりにしたのだそう。

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日が暮れて辺りが暗くなりはじめると美術館の照明のほうが明るくなって、建物の中がぼんやり浮かび上がる。公園がえりの家族や老夫婦やカップルが、絵画、陶磁器の展示、レストランに気がついて、今度また来てみようか、と思ってくれるといいなという意図があるそうです。

セミナー後半は閉館後の館内へ。
夜の美術館!

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自然光をとりいれた空間で作品を見るのがホキ美術館の良さですが、そこは夜だと味わえませんね。

ギャラリー1は今回の企画展「人思い、人想う」。新作5点をふくむ50点を展示、写実絵画の現在を見ることができます。島村信之さんの光のさしかかる肌の質感や、写実ながら筆跡の残る画風が味わいの小尾修さんの作品など、一枚ずつが渾身の作品です。

奥はそのまま宙に浮いた回廊に続いています。昼間まわったときにはぜんぜん気つかなかったのだけど、展示の壁がうねうねしてた。鉄製の床は大勢が歩いても揺れないような工夫がされている。なにせ鉄板の強さだけでなくて、歩道橋でおこるような共振なども防止しないといけないのです。

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地下一階のギャラリー2は日本の写実絵画を牽引してきた森本草介氏の作品を展示。セピア色のやさしい色合いの作品にあわせて、照明も温かみがあります。

次の展示室は色温度をあげて硬質な印象。写実絵画の巨匠野田弘志と、彼に影響を受けた画家たちの作品がならぶ。森本さんの柔らかな色彩とはうって変わって、黒を効果的にとりいれた、ぱりっとした作風。五味文彦さんの作品などは、画面全体にピントがあっているような現実世界にない感覚で、ぐっと目をひく。ひとくちに写実といってもいろいろなんだなあと思った。

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天井も高くなって、ダイナミックな作品を味わえる空間でもあります。

大階段をおりるとギャラリー7。ここに展示されている原雅幸さんの作品は、光と影のたなびく明暗の層が美しい風景画。絵の上から自然光がさしこむつくりの空間で、ここも昼の方がきれい。
展示の反対側の壁は、グレーから白のグラデーションになっていて、外へ向かう開放感を演出している。この色変化の再現には苦労したのだとか。

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最後は美術館推しの作品を展示する空間。壁全体が黒でインパクトがある。若手でも保木さんが気に入れば、巨匠と呼ばれる人と同じ扱いで作品が並ぶ、そんな展示室なのだそうです。

丸形のソファーに座りながら指向性のスピーカーで作品の解説を聞ける。昼の早いうちだと館内はまだ空いているので、気になった作品からいくつか聞いたりした。とても贅沢な空間。

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美術館をこの形におさめるまでの経緯や、設計・施工時の裏話は、聞いていて楽しかった。

館長の保木さんのコレクションを一列にならべると500mほどになる。それを80mの空間におさめるにはどうすればいいか、と考えた結果、今の形になったのだそうです。
私の説明もいろいろはしょってますが、担当者だった鈴木さんも、なぜこのカーブなのかを説明するとものすごく細かい話になるとおっしゃっていました。

本当は全部鉄板で造りたかったけど、ちょうどその時期に中国での鉄の需要が急増していて価格が高騰し始め、設計のひき直しをよぎなくされたのだとか。
けれども鉄の代わりにコンクリートを使うとアルカリ性物質が発生してしまう。これが作品に影響を及ぼすので、通常美術館ではすぐには作品を入れずに、約二年間はひたすら換気をするのだそう。しかし美術館のオープンは二年後には引き延ばせない。さてどうするか…。

さらには建築業法と設計者の意図との綱引き、実際に施工が始まってからは現場の裁量に合わせながら仕上がりを調整したり…と、聞くだけでくらくらする話が盛りだくさんでした。

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セミナーのメモ。

見始めから終わりまでひとつの音楽の流れの中にいるような、展示全体が作品という感じの美術館でした。今考えると、自然な遷移や展示室ごとの飽きさせない工夫など、建物のつくりにその秘密があったのかも。鈴木さんの、設計に足し算はいくらでもできるけど引き算は本当に難しい、という言葉が印象に残りました。

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夕暮れになると美術館の表情が変わるのは、思ってもいなかった発見。
エントランスが西向きなので、建物のガラスが暮れの色に染まってとてもきれい。

9月だと18時ごろに茜色の空に染まっていましたが、冬場ならもう少し早いかな? ランチのラストオーダーが14:30なので、ランチも食べたいというひとには兼ねあいが難しいですが、建築好きな人にはぜひ夕方の美術館もおすすめです。